第3章 生まれてきてくれて…
宴が始まるまで大人しくしてろと、花子は白ひげの自室に放り込まれた。口ではああ言ってはいるが、積もる話もあるだろうと気を遣って2人にしてくれたマルコの気遣いに花子は顔を綻ばせる。
「マルコも立派になったわねぇ~。」
「あぁ、今じゃ俺の右腕だ。」
「昔はあんなに可愛かったのに。」
知らない間に月日は流れているのだと、花子は嬉しくもあるがそれとは逆に寂しくもあった。
「…本題だが、花子。お前この17年、何処にいやがった?」
「…私もね、よく分からないの。」
花子は白ひげに全てを話した。ロジャーの処刑の日、自分は自ら海に身を投げた。しかし、気付いたらある島に流れ着いていた事。そして…。
「あの人の…ロジャーの息子に会ったわ…。」
「?!…あいつの?」
「よく…似ていたわ。太陽の様に輝く笑顔も…ふと見せる真っ直ぐな瞳も…。」
エースの事を話す花子の顔は愛おしいものを見つめる様に優しく、彼女のそんな表情に白ひげはぐっと唇を噛んだ。
「でも…あの子は凄く辛い思いをしていたのね。」
極悪人、最低なクズ野郎。エースが耳にするロジャーの話はどれも酷いものだった。そして、その子供も生まれてきた事が罪だと…鬼の子だと…。
「…下らねぇ。誰から生まれ様と…人は皆、海の子だ。」
「ふふっ。あなたならそう言ってくれると思ったわ。」
ロジャーと互角に渡り合っていた白ひげだから分かる。世間からは大罪人だ何だと言われているが、彼は只ひたすらに海を…自由を愛していたのだ。
「ねぇ、ニューゲード。もしね、あの子に会ったら…あなたが居場所になってあげて。」
「俺が?」
「家族を大切にするあなただからこそ…あの子にはあなたが必要になると思うの。」
「…それを決めんのはそいつだ。俺が自ら手を出す事はしねぇ。」
「ふふっ、勿論よ。」
そう微笑む花子の瞳は慈愛に満ちており、ふっと笑みを浮かべ白ひげは彼女の頬を大きな親指でそっと撫でる。
「お前は…昔と変わらず綺麗なまんまだなぁ。」
「あら、あなたもそんな事言える様になったのね。」
年を取った証拠かしらと戯ける花子を見つめる白ひげは、ロジャーを見つめる花子と同じ表情をしていた。