第3章 生まれてきてくれて…
しんっと静まり返る甲板。それを打ち消したのは4番隊隊長兼コックのサッチだった。
「女ぁっ?!しかも美人っ!」
「あら、ありがとう。」
「そこに反応するなよい…。」
顔を見せた花子にサッチは動揺を隠せずにいた。線は細いと思っていたがマルコを弄び白ひげと互角に渡り合う人物がまさか女だったとは。【美人】と言う言葉に気を良くした花子は笑顔でサッチに手を振り、デレッとした顔で振り返す彼の頭をマルコが叩く。
「花子!どうしてくれんだ!うちの隊員が使いもんになんねぇだろい!」
「あら、私の覇気なんかで気を失う様じゃ…あなたの言葉を借りるとしたら…まだまだハナタレね。」
「グララララッ!最近、お前達が腑抜けてたからな!良い刺激になっただろう!」
「自分の力量を考えろ!親父も面白がるなよい!」
楽しげに笑い合う2人に勘弁してくれと、マルコは頭を抱える。白ひげと言葉を交わす花子に困惑する者もいる中、イゾウがゆっくりと彼女に近付いていった。
「花子…。」
「イゾウも久し振りね。見ない間にまた男前が上がったんじゃないの?」
出会った頃には無かった右眉の傷を撫で微笑む花子にイゾウは顔をくしゃっと歪め彼女を抱き締めた。
「無事でっ…良かったっ…!」
「ごめんね、心配かけちゃって…。」
絞る出す様な切ない声。初めて見る彼の弱々しい姿に2人の関係を知る者は、微笑ましそうに見つめている。
「聞きてぇ事は山程あるが…。」
白ひげは持っていた薙刀の柄の先をドンッと甲板に叩き付け息子達に向かって叫んだ。
「てめぇ等ぁー!宴の準備をしろー!」
うおぉっ!!っと雄叫びを上げる者もいたが、まずは失神した隊員達をどうするのかと、マルコの怒号が飛ぶ。
(たく…!仕事増やしやがってっ…!)
(マルコも苦労するわね。)なでなで
(誰のせいだと思ってんだよいっ!?)撫でるなっ!
(よいよい。)