第3章 生まれてきてくれて…
甲板で2人の空中戦を見ていた隊員達は驚きを隠せずにいた。あの"不死鳥"のマルコがまるで子供の様に弄ばれていると。
「てっ、てめぇ!マルコ隊長に何をしやがった!?」
「…。」
トンッと甲板に着地した人物に他の隊長や隊員達は武器を構え睨み付ける。そんな彼等の様子をイゾウは無言で見据えているだけだった。
「お前等!待て!」
「「「死ねやぁー!!」」」
マルコの制止の声も聞かず隊員達は一斉にその人物に飛び掛かった瞬間、ブワッと周りの空気が変わった。
「っ!これはっ…?!」
「覇王色のっ覇気…っ?!」
ピリピリと肌を刺すそれには覚えがある。赤髪のシャンクス。そして自分達が親父と慕う白ひげ等、選ばれた者しか発する事の出来ない覇気。その空気に当てられて隊員達は次々と気を失い倒れていく。
「あぁっ…!だから言ったのによい…。」
「っ、マルコ、どう言う事だ?」
遅れて甲板に降り立ち失神している隊員達を見つめ溜め息を漏らすマルコに、3番隊隊長であるジョズが問い掛ける。額に冷や汗を流している彼は顔を歪ませており他の隊長達も同じ様な表情。
「…あいつは「グララララッ!騒がしいと来てみりゃあ…。」
「「「親父っ!?」」」
ドシンッと大きな身体を揺らし現れたのは、この白ひげ海賊団の船長"白ひげ"エドワード・ニューゲード。彼は甲板に倒れ込み気を失っている息子達を見渡し、その原因の人物を見据えた。
「…随分と派手にやってくれたなぁ。」
「…。」
押し潰されそうな程の重圧。マルコ達でさえ立っているのがやっとだと言うのに、その人物はきゅっと口角を上げる。
「親父っ、覇気を抑えてくれっ!」
覇王色の覇気のぶつかり合い。マルコの声に耳を貸さず2人は武器を構え斬りかかった。
「ぐっ…!?」
「凄ぇっ…!?」
ぶつかり合う武器は一振一振重く、生まれた風圧にマルコ達は吹き飛ばされ無い様踏ん張るのがやっと。ギリギリと鍔迫り合う中、ポツリと鈴が鳴る様な声が響いた。
「…久し振りね、ニューゲード。」
「…腕は鈍ってねぇみたいだな。」
その言葉に周りの空気が和らいだ。お互いに武器を納め、もう戦う意思は無い様子。
「何処ほっつき歩いてやがった…花子。」
フードを取り顔を見せた彼女を見つめ、白ひげは懐かしそうに表情を柔らかくした。