第3章 生まれてきてくれて…
マルコ side
隊員に報告を受け甲板に出てみりゃあ、確かに赤い鳥に乗った奴が船の周りを飛んでいた。だが、攻撃をしてくる気配はなく俺達の出方を伺っている様に見える。
「隊長!」
「ずっとあの調子かい?」
「はい。攻撃の意思は無いのかぐるぐると船の周りを飛ぶだけで…。」
まったく…何がしてぇんだよい。訳の分からねぇ行動をする奴を見据えていると、甲板に出てきたイゾウの驚愕の声が聞こえた。
「?!あれはっ…!?」
「イゾウ、知ってんのかよい?」
「あぁ…だが、そんな筈は…!」
こいつがこんなに狼狽える何て珍しいな。取り敢えず、引っ捕まえて尋問するか。俺は腕を翼に変え空に飛び立った。
「…。」
「…逃げるつもりか?」
俺が近付いていくと奴は天高く舞い上がる。悪いねい、逃がしてやる程俺も優しく無いんでね。
「"鳳凰印"!」
足から強力な衝撃波を繰り出し叩き込む。だか、それはヒラリと躱され俺と向かい合う奴からは余裕さえ見受けられる。
「お前、ウチに何の用だ?」
「…。」
俺の問いに奴はきゅっと口角を上げると人差し指を口元に持っていく。言えねぇってか?
「だったら…力ずくで吐かせるだけだよい!」
ーーーーーー
何だ?こいつは…?俺の攻撃をヒラヒラと躱すだけで全く反撃をしてこねぇ奴に違和感を覚える。
「お前、本当に何がしてぇんだよい。」
敵意も殺気も感じられずフードの付いたマントで顔は見えねぇが、こいつは俺との戦いを楽しんでいる様に見える。
「そろそろ、ケリ着けさせてもらうよい。」
俺は天高く飛び立ち急降下すると勢いそのまま奴に蹴りを繰り出した。
「"鶴爪"!」
鋭い足の鉤爪が奴の腹を捉えた。少し遣り過ぎたかと思ったがここまで手古摺らせられたんだ。
「消えたっ…?!」
確かに奴を捉えた感覚はあった。だが、俺の攻撃を受けた奴はボンッと弾け煙と共に姿を消した。
「?!」
その瞬間、背筋に悪寒が走る。体勢を整えるよりも速く俺は背中を取られちまった。
(しまっ…やられっ…!)
「随分な挨拶じゃない…マルコ。」
「?!」
俺の首に腕を回し耳元で囁く声、するりと俺の顎を撫でる左手首に光るそれに目を見開いた。
「おまっ…!?」
腕を解き落下していくそいつの漆黒の瞳がフードの隙間から見え俺は言葉を失った。