第3章 生まれてきてくれて…
グランドラインのある海域。花子はキンジから頼まれた仕事を終えフーシャ村に戻る途中だった。
「キンジめ…自分の仕事、私に押し付けて。」
『主…。』
花子を背に乗せた大きな鳥は苦々しげに顔を顰める彼女に苦笑いを浮かべる。燃える様な美しい赤い翼を持つその鳥は朱雀。花子の口寄せ獣である。
「なぁにが、"たまたま私の仕事する場所でたまたま!別の依頼が入った"よ!完全に行くのが面倒臭かっただけじゃない!」
『主…素が出ているぞ…。』
胡座をかき片膝に肘を乗せ頬杖付く花子の仕草は普段の彼女からは想像出来ない。グチグチと愚痴を溢す彼女を朱雀が宥めていると、ふと下の海に視線を移す。
『ん?…主、下を見てみろ。』
「どうしたの?」
視線の先には1隻の船。それを見つめた花子は初め目を見開くもすぐに口角を上げニヤリと笑みを浮かべた。
「ふふっ…ちょっと付き合って貰おうかしら。」
『主…。』
その船に向かう様に言われ録でもない事を考えているのだろうと、朱雀は溜め息を溢しゆっくりと身体を降下させる。
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モビー・デェック号の船医室でマルコは書類の整理をしていた。船医でありながら1番隊隊長を担っている彼は毎日大量の書類に追われている。
「…何だか騒がしいねい。」
バタバタと忙しない足音が聞こえ、また隊員達が馬鹿をやっているのかと呆れている彼の部屋の扉が勢いよく開いた。
「マルコ隊長!」
「うるせぇよい!…ノックぐらいしろい。」
目頭を押さえ目の疲れを逃がすマルコに隊員が慌てた様子で駆け寄ると、巨大な赤い鳥が船に向かって突っ込んで来ると報告を受ける。
「お前等、何年この船に乗ってんだよい…今更、でけぇ鳥で騒いでんじゃねぇよ…。」
「それが…その鳥の背中に人が!」
「…人?」
天下の白ひげ海賊団の船に1人で突っ込んでくるなんて命知らずもいたものだ。折角なのでそいつの顔でも拝んでやろうと、マルコは急かす隊員の後を追い甲板に向かった。
(何もんだっ!?てめぇはっ!?)
(降りてきやがれっ!)
(ふふっ。)驚いてる、驚いてる♪
〘主…。〙楽しんでいるな…