第16章 ガレオン船
ロビン side
私が乗り込んだ船の人達は本当に変わった人達。初めは疑われていたけどすぐに受け入れてくれた。剣士さんだけはまだ疑っている様だけど、彼等の警戒心の無さに驚きつつも安心している自分がいた。
「ロビ〜ン!またお手々出して!」
ちょこちょこと可愛らしい笑顔で駆け寄って来るのは剣姫さんの娘のおチビちゃん。その後ろでは剣姫さんが微笑ましそうにしている。
「ユラ、能力を使うと疲れちゃうのよ?」
「これくらい大丈夫よ。」
能力を使うとおチビちゃんは楽しそうに遊んでいる。海賊船なんて思えない程穏やかな空気が流れていた。
「ありがとう、ロビン。」
柔らかく微笑みおチビちゃんを見つめる剣姫さんの眼差しは本当にあの海賊王のクルーだったのが疑ってしまう程、慈愛に満ちていていた。
「…ねえ、貴女はゴールド・ロジャーと共に"ラフテル"に行ったのよね?」
「…ええ。」
じゃあ、彼女は知っているのね…空白の100年を…。ポーネグリフが示すその先を…。
「でも、教えてあげない。」
「…あら、残念。」
「"オハラ"にいたならやっぱり気になる?」
「っ?!」
何故、彼女がそれを知っているの?!驚き言葉を失う私に剣姫さんは可笑しそうに笑っている。
「これでも情報屋の手伝いをしていたの。この22年何があったか頭に叩き込んでいるつもりよ。」
「…私を海軍に引き渡す?」
私の事を知っているなら彼女は全て知っている筈…。私が…私達が何をしてきたのか…あの日何があったのか…。
「そんな事しないわよ。」
「え…?」
「私、あいつ等嫌いなの。」
つんと口を尖らせ子供の様な事を言う剣姫さんに思わず綻んだ私の頬を彼女は優しく指で撫でた。
「それにロビンはもう私達の大切な仲間よ。仲間を売る様な真似なんかする訳ないじゃない。」
「仲間…。」
そんな事初めて言われた。今まではお互い利用し合って生きてきた。仲間なんて私には必要ない。
「私、ロビンの事好きよ。」
「っ!」
「これから沢山時間があるんだもの。ゆっくりでいいのよ。」
優しく私の頭を撫でると剣姫さんはおチビちゃんの方へと足を進める。彼女に触れられたところが…胸が熱い…。
(絆されているのは…私の方ね…。)
もう少しだけ…この穏やかな日々に浸っていたい…。