第16章 ガレオン船
最初はロビンの仲間入りに戸惑いはあったもののメリー号はいつもの賑やかな空気に包まれている。ゾロだけは納得していないのか少し離れた所から彼女の様子を伺っていた。
「まだ疑ってるの?」
「元敵だった奴を信用できるか。」
「そんなに肩肘張ってると疲れちゃうわよ?」
「あいつ等が呑気過ぎんだよ…。」
はしゃいでいるルフィ達を横目に大きな溜息を漏らすゾロに苦笑いを浮かべながら花子は彼の隣に移動する。
「まぁ…確かに警戒するのに越した事ないけど、大丈夫よ。」
ふわりと柔らかい微笑みを浮かべ仲間を見つめる花子にゾロの胸がドキリと跳ね、彼女の頬に手を伸ばす。
「…んで避けんだよ。」
「突然だったから。」
手を避けた花子の行動にゾロは不満そうに顔を顰め今度は逃さない様に両手で頬を挟んだ。
「突然じゃなかったらいいのかよ?」
「ちょっ?!ここ船っ!」
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべ顔を近付けて来るゾロの肩を押しながら花子は声を上げる。後少しで唇が触れようとした時。
「あら、お邪魔だったかしら?」
「ロビンっ!」
「…取込み中だ他当たれ。」
にっこりと微笑み現れたロビンに花子は天の助けだと目を輝かせ、邪魔をされたゾロは彼女を睨み付ける。そんな睨みも気にする事無く2人の前を通り過ぎ海を眺めるロビンにゾロは舌打ちを溢しルフィ達の所に戻って行った。
「ありがとう。」
「貴女、押されると弱いタイプなのね。」
意外だとでも言いたげな彼女の言葉に花子は罰が悪そうに苦笑いを浮かべ、柵に身を預け海を眺めるロビンの隣に移動した。
「貴女が1番私を警戒してると思っていたわ。」
「ルフィが決めた事だもの、私は船長に従うだけ。」
ゾロからの疑いの目はあるものの他のクルーからはそんなものは感じられない。それは花子も同じ。何処か淋しげに見えるロビンの顔を見つめる花子は優しく微笑んだ。
「これからずっと一緒にいる仲間を疑う訳ないじゃない。」
「…そう。」
ユラに呼ばれ甲板に向かう花子を見送りロビンはまた1人海を眺める。何かを噛み締める様に固く結ばれた彼女の口元は微かに上がっていた。