第15章 ビビとの別れ
ゾロ side
ー片思いだったの…。ー
その言葉を聞いた時、苛付きに似たモヤモヤとした感情が俺の胸を支配した。
(くそっ…何なんだよっ…!)
何故、俺じゃない…あいつの中にいるのが自分じゃ無い事にもどかしさを感じる。こんな感情、くいなにも…ナミの奴にだって思った事が無い。
「…あ?」
こんな時は鍛錬するのが1番だ。ルフィ達のいる部屋を出て歩いていると中庭のベンチに座る花子の姿を見付けた瞬間、俺の心臓がドクリと脈打つ。
「っ!」
月を見上げ涙を流す花子は儚げでガラにも無く綺麗だと思った。それと同時に俺の中にドロドロとした黒いもんが湧き上がる。
「…そんな所にいないでこっちにいらっしゃい。」
「…あぁ。」
気配は消していたつもりだったが気付かれていたみてぇだ。妙な気まずさの中近付けばもう花子の瞳にある涙は拭われていた。
「鍛錬してたの?チョッパーに怒られるわよ。」
「…どうしようが俺の勝手だ。」
お前は何をしてたのかと尋ねたら、少し頭の整理をしたかったと悲しげに微笑む花子にまた胸が締め付けられる。
「多分、今夜辺りにここを発つと思うわ。」
「…あぁ。」
クロコダイルが倒され海軍がこの国に集まって来ている。早ぇとここの場を離れねぇと面倒な事になるな。
「…俺が餓鬼の時、通っていた道場に凄ぇ強い奴がいたんだ。そいつは師範の娘だったがそれを抜きにしても強かった。」
「…うん。」
何故、俺はこんな話をしてんだ?だが、何故か花子にはくいなの事を知って欲しかった。自分が女である事を悔しがっていたあいつの事を。
「いつかどちらかが世界一の大剣豪になる。そう約束したのにそいつは死んじまった。」
くいなの夢を俺が叶える。俺の名前があいつの所にまで届くぐれぇ俺は強くならなけりゃいけねぇ。だから、余計な事を考えている場合じゃねぇんだ。
「なのに、何故かお前の事を気にしちまう。」
「…私が剣士だから?」
「…分からねぇ。」
剣姫の名は俺だって知っている。女だてらに海賊や海軍を圧倒しあの鷹の目と互角に渡り合う女剣士。
(…だが、本当にそれだけか?)
胸の中にあるこの感情の正体を…俺は知らねぇ。