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海賊王の懐刀

第15章 ビビとの別れ


花子 side


ユラを寝かし付け私は1人宮殿の中庭を歩いている。夜風に肌寒さを感じるが今の私には心地良い。

ー俺はロジャー!ー

偵察へ向い怪我をしたキンジを国に連れて来てくれたのがロジャーだった。外部の者は国に入れられないと当時の長が彼等の入国を拒んだがカジヤ様の計らいで、ロジャー達は私達の家に住む事になった。

ーお前、俺と来ないか?ー

何を思ったのかロジャーは私に一緒に海に出ようと誘ってきた。勿論、私は断った。私の国は隣国との長い戦で人手が足りておらず、何より死んで逝った仲間達の為にも私が逃げ出す訳にはいかない。

ー仲間を何だと思ってやがる!ー

ある日、隣国へ偵察に向かった時、私の仲間がヘマをして敵襲にあった。仲間を庇い深手を負った私を上層部は馬鹿だ、捨て置けばいいと吐き捨てる。でも…ロジャーは怒りを露にして声を荒げていた。

ーお前は…この国が好きか?ー

そう尋ねられた時、私は直ぐに答える事が出来なかった…。勿論、里の人もこの国も大好き。でも…仲間の…助けられる命を犠牲にする事が本当に正しいのか…。

ーお前にそんな顔をさせるこの国は俺がぶっ飛ばしてやる!ー

何十年も続いている戦を終わらせる事なんて出来る訳が無い…どうせ口だけだと。でも…ロジャー達海賊団は敵の国を鎮圧させ互いの国に平和協定を結ばせた。

ー俺は海賊だからな!宝は貰っていくぜ!ー

そう言って私を小脇に抱え逃げ出す彼に戸惑いとは裏腹に私の心はとても晴れやかだった。

ーお前はそうやって笑っているのが1番いい。ー

只、命令されるがまま任務を遂行すればきっといつか国は救われる…。感情なんていらないと思っていた私にロジャーは色んなものをくれた。

ーこれをお前にやるよ。ー

ロジャー達と別行動を取っていた私が合流し宴が開かれた夜、彼は私に土産だと金の腕輪をくれた。柔らかな瞳…優しく語りかける声に切なくなる。

ー何も…言うなっ…。ー

海賊団を解散すると伝えられ彼が船を降りる前の日、私は自分の想いを伝え様としたけど…返ってきたのは拒絶する言葉だった。何も知らなかった私にこんな感情を植え付けといて突き放す彼が憎らしかった…それでも…。

(貴方を…愛していたわ…。)

こんな思いをするくらいなら出会わなければ良かった…。でも…私は貴方といられて幸せだった…。

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