第3章 生まれてきてくれて…
昔、昔、ある所に1人の少女がいました。
少女の住む国は争いが絶えず、少女も国の為に必死に戦いました。
しかし、ふと少女は思うのです。自分は何の為に戦っているのだろう…。命を散らした仲間達の亡骸の先に何があるのだろうと…。
そんな時、1人の男が少女の前に現れました。
『俺と一緒に来い!』
何度もそう言う男に少女は断りました。
自分はこの国を離れる事は出来ないと…死んで逝った仲間達、そして残された者達の為にも自分が逃げ出す訳にはいかないと。
首を縦に振らない少女に男は言いました。
『お前にそんな顔をさせる奴なんて、俺がぶっ飛ばしてやる!』
晴れる事の無い暗闇に一筋の光が差した気がしました。
長きに渡る戦乱は幕を閉じ国民は涙を流し喜び、国に平和が訪れました。
『俺は海賊だ!欲しいもんは力尽くでも手に入れる!宝は貰っていくぜ!』
男は海賊だったのです。少女を奪うと男は逃げる様に国を飛び出しました。拐われたと言うのに少女の心はとても晴れやかでした。
海賊となった少女はその力を男の為に使いました。男に降りかかる火の粉は全て払おう、彼の為なら命さえも捧げよう。
いつしか少女は【海賊王の懐刀】と呼ばれる様になりました。
『俺はお前を1人にはしねぇ。だから、俺の隣にいろよ!』
男と共にいる内に少女にある変化が訪れました。
キラキラと輝く男の笑顔を見る度に胸が高鳴る。気付けば男の姿を目で追ってしまう。
少女は…男に恋をしたのです。
『お前にこれをやるよ。』
結ばれなくてもいい…彼と一緒にいられるのなら…。男から贈られた腕輪を見つめ少女は自分の想いをそっと胸に仕舞い込みました。
『こいつを…頼んだぜ。』
目的が達成され海賊団は解散し男はある島に降りました。暫くして少女が男の元を訪れると、彼の隣には美しい女がいました。
幸せそうに笑い合う2人の姿。悲しみに打ち拉がれた少女は男が幸せならと2人を祝福しました。
そして…運命の時が訪れるのです。
男が処刑される日、少女は彼の前に現れました。追い縋りたい気持ちを必死に堪え笑顔を見せる少女に男は言いました。
『自由に生きろ!』
それが…男の最後の言葉でした…。