第15章 ビビとの別れ
花子 side
「貴女はご存知ないかもしれませんが…昔、ある病が世間を騒がせました。」
「…。」
「その病は珀鉛病と言って、治療法の見つかっていない不治の病です。」
「っ?!」
珀鉛病と言う言葉にドクリと心臓が大きく跳ねた。顔を強張らせる私にお医者様はきゅっと眉間に皺を寄せる。
「…貴女のお連れになっている少女…あの子は珀鉛病です。」
「っ?!…何故、それを…?」
「…治療の際に…まだ発症して間もないとは思いますが、あの症状は珀鉛病です。」
焦燥とした私の様子に国王様やお医者様は思い悩んだ様に顔を歪める。世間では珀鉛病は伝染病と伝えられている。なら、彼等の思う事は1つ。
「…花子殿「珀鉛病はっ伝染病ではありませんっ!」
きっと彼等はユラが珀鉛病だと分かると国を守る為にユラを殺すかもしれない…。そして、私達も…。
「お願い致しますっ信じてくださいっ!あの子はっ…ユラは貴方方に害を及ぼしたりしません!私のこの命に誓って!だからっ…!」
お願い…あの子を拒まないでっ…あの子は大人の都合に利用されていただけ。本当なら幸せに暮らしていた筈なの…!
「花子殿…。」
「お願いしますっ…!」
床に額を擦り付け懇願する私の肩に国王様がそっと手を置く。顔を上げる様に言われ彼の顔を見上げると、とても優しい微笑みを浮かべていた。
「心配するな。私もこの国も…あの子を拒む事はしない。」
「えっ…?」
「珀鉛病が伝染病で無い事は知っている。もし、そなたが知らなかったら辛い思いをさせると思ってな。」
治療法の無い珀鉛病に犯された者の命は短い。その事実を私に伝える事は余りにも酷だと国王様は悲しそうに眉を下げる。
「ありがとうっ…ございますっ…!」
「私も人の親だ…子を思う気持ちは分かっている。」
力になれず申し訳ないと言う国王様の優しさに涙が溢れ出す。そんな時、扉から誰かに呼び掛ける声が聞こえた。
「何事だ?」
国王様の呼び掛けに1人の兵士が困惑した様子で部屋に入って来た。その言葉に私は全身が凍り付き息が詰まるのを感じた。
「少女が部屋を覗いていたので声をかけたのですが…驚かせてしまったのか何処かに走り去って行ってしまって。」