第14章 アルバーナ
「パパっ!?」
「ビビ…すまん…。折角お前が命を賭けて作ってくれた救国の機会を…活かす事が出来なかった…!」
悔しそうに顔を顰め額から血を流している男はビビの父であり"アラバスタ王国"の現国王ネフェルタリ・コブラだった。突然、姿をくらませた国王の出現にチャカも驚きを隠せずにいる。
「ククッ…王の言う事はまったくだな。だがMs.ウェンズデー、お前が此処へ辿り着けたのはこいつ等のお陰。感謝の1つでもしてやるんだな。」
「ルフィさんは何処?!何であんたが此処にいるのよ!」
「奴なら死んだと言ったろ?」
「嘘よ!ルフィさんがお前なんかに殺される筈がないっ!!」
自分に言い聞かせる様に叫ぶビビにクロコダイルは彼女等親子は助けるつもりは無いと告げる。国が滅ぶ時は王族も滅ぶのだと。そう嘲笑い今度はチラリと花子に視線を送った。
「…だか、お前が俺のものになるんなら他の奴等の命は考えてやる。」
「…。」
「お前にとってこの国がどうなろうと関係ねぇだろ?仲間の命を天秤にかけりゃあ、どちらにつくのが利口か分かるだろ?花子。」
試す様にニヤリと笑みを浮かべ自分を見つめるクロコダイルを花子は黙って見据えていた。そんなのは嘘だと声を荒げるビビを横目に彼女は1つ溜め息を漏らし1歩足を前に出した。
「駄目よっ花子さん!こんな奴の言葉に耳を貸したらっ!」
1歩1歩近付いて行く花子に駆け寄ろうとするビビを朱雀が邪魔をするなと言う様に制す。その鋭い眼差しにビビは悔しそうに唇を噛んだ。
「やはり…お前は頭の良い女だ。」
「…ルフィはあなたをぶっ飛ばすと言った。」
愉快そうに目を細め手を差し出すクロコダイルを花子は目を逸さずじっと見つめている。
「他の皆とも後で会おうと約束したの。」
「…。」
「ビビは"アラバスタ"を何処よりも幸福な国にすると言った。ユラにもそうなったこの国を見せてあげたい。」
「…何が言いてぇ。」
「私は彼等の言葉を信じる。みっともなくても最後まであなたにあらがってみせるわ。」
黒曜石の様な花子の瞳からは強い意志が見受けられ、ピクリと眉を動かせるクロコダイルの手を彼女はパンッと払い除けた。
「中途半端に粋がっている小物が…海賊(本物)をナメんじゃないわよ。」