第14章 アルバーナ
睨み合う花子とMr.2の緊迫した空気にユラは幼いながらゴクリと固唾を飲み込み見守っている。
「大人しく通してくれるって…感じじゃないわね〜い。」
「勿論。」
只、立っている様に見えるが隙のない花子の雰囲気にMr.2の額からは一筋の汗が流れ落ち頬を引き攣らせる。
「ゼロちゃんにあんたはなるべく無傷で捕らえる様に言われてるのよ〜。」
「あら、あなたが私に傷1つでも付けられると?」
スッと目を細め花子は挑発する様にくいっとMr.2に向かって指を折る。まるで自分には傷1つ付ける事が出来ないと言う様に。
「私を捕らえたいなら殺すつもりじゃないと駄目よ。」
「…ナメられたもんね〜。」
分かり易い挑発であるがMr.2の額にピキリと青筋が浮かび上がる。力強く地面を踏み締め花子に蹴りを放つがそれは彼女に届くこと無く躱された。
「避けてるだけじゃあちしには勝てないわよ〜ん!」
蹴り、突き、そしてまた蹴り。一見Mr.2が押している様に見えるがその力の差は歴然。まるで子供と遊ぶ様に花子はMr.2の攻撃を次々と躱していく。
「これでも喰らいなさいっ!」
「…子供騙しね。」
振り上げられた足が砂を巻き込み花子の視界を遮る。手に風のチャクラを込め砂を吹き飛ばした花子の目の前には誰もいなかった。
「あんたと戦ったら命がいくつあっても足りないわ〜!逃げるが勝ちよ〜ん!」
「…え?」
馬に跨りMr.2はスタコラと去っていった。余りにもあっさりとした敵の退却に拍子抜けした花子はポカンと立ち尽くしている。
「…。」
『…主、追わなくて良いのか?』
「?!ちょっと!待ちなさいっ!?」
朱雀の声に花子はハッと正気を取り戻しMr.2の向かった方へ慌てて駆け出した。
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門を潜り"アルバーナ"に入った花子達の目に飛び込んで来たのは悲惨なものだった。建物は崩壊し血塗れの人々が苦痛に唸り声を上げ倒れている。
「おかあさんっ…。」
「大丈夫よ。」
初めて見る戦場に怯えるユラを花子はキツく抱き締めフードを深く被らせる。仲間を探す為、花子は建物の上に登り辺りを見渡していると、Mr.2がビビに襲い掛かろうとしているのが目に入った。