第14章 アルバーナ
「行くわよ、ビビ。」
「えぇ!」
花子とユラは朱雀にビビはカルーの背に乗り反乱軍が現れるであろう【南門】を目指す。
「…ねぇ、花子さん…反乱軍を止めてクロコダイルを倒したとしても…この国はまた立ち上がれるかしら…。」
砂漠を駆け抜けるビビが徐ろにポツリと呟く。クロコダイルを倒し平和が訪れたとしても1度失った国民の心を取り戻せるのか。
「…私の故郷は争いが絶えない国だった。下らない権力争いに多くの人が命を落としていったわ。」
争いが無くなった後も中々国は纏まらなかったとキンジから聞いた。また裏切られるのではないか…また大切な人を失うのではないか。
「時間はかかったけど…今は皆平和に暮らしているわ。」
「…私に出来るかしら。」
「出来るわよ。だってビビはこんなにもこの国を愛しているのだから。」
花子の優しい声にビビは胸の内にあった靄が晴れた様な気がした。やれるかどうかではない、やるのだ。自分が愛したこの国を何処よりも幸福な国にしてみせると。
ーーーーーー
ビビ達が【南門】に辿り着くとまだ反乱軍はまだ到着していない様子。
「朱雀、ユラの事お願いね。」
『承知した。』
ユラを朱雀の背に乗せたまま奈津子は地面へと降り立つ。だんだんと近付いてくる反乱軍にビビが両手を広げながら叫ぶ。
「止まりなさい!反乱軍!!」
ビビの必死な叫びも反乱軍の雄叫びに掻き消される。しかし彼女は何度も何度も叫び続けた。夥しい数の軍勢が押し寄せる中、黒い馬に乗った青年がビビの隣を横切る。
「待って!話をっ…リー…!」
「ビビっ!」
彼に手を伸ばそうとビビが振り返った時、反乱軍の馬が彼女にぶつかり押し寄せてくる渦に飲み込まれてしまった。
「おかあさんっ!ビビっ!」
『主っ!無事か!?』
反乱軍が去り舞い上がる砂煙の中、2人の安否を確認するとビビを守る様に彼女に覆い被さっている奈津子の姿。
「うっ…。」
「奈津子さんっ!私を庇って…!」
「おかあさんっ!大丈夫!?」
「大丈夫よ…それより…っまだ、やれるわよね?」
涙を浮かべ心配そうにしている2人に笑顔で答え奈津子はビビに尋ねる。
「止めるわ!何度跳ね返されたって!ちゃんと船で学んだもの、諦めの悪さなら!」
彼女を見つめるビビの瞳には強い思いが宿っていた。