第13章 ユバ・レインベース
花子 side
真っ暗な視界、冷たい水の感覚に何処が懐かしさを覚える。
(あの時と同じね…。)
あの日…ロジャーが処刑された後、私は海に身を投げた…。あの人の側にいたくて…あの人が愛した海で最後を遂げたかった…。
ー馬鹿野郎…お前の来る場所はここじゃねぇ…。ー
このままあの人の所にいけるのならそれもいいかもしれない…そう思った時、最後に聞いた彼の声が頭に響く。
(そうよ…!私には守るものがあるっ…!)
腕の中にいるユラをキツく抱き締め必死に身体を動かしていると暗かった視界に光が差した。
「「ぷはっ…!」」
水面から顔を出し大きく息を吸う。空気を求める様に荒く呼吸をするユラの背中を優しく撫でる。
「ユラ、大丈夫?」
「ゲホッ…ゲホッ!っうぅ〜…っ!」
少しパニックを起こしているユラに声をかけ陸地に上がれば、不規則だったユラの呼吸も次第に落ち着いてきた。
「おい、生きてるか?ルフィ。」
「ウソップさんっ、しっかりぃー!」
「まったく…!何やってんのよっ、あんた!」
ルフィを抱えたサンジ君。途中で瓦礫に頭をぶつけ気を失ったウソップ君を抱えたビビとナミ。そして何故かスモーカーを抱えたゾロが水面から姿を現す。
「ロロノアーっ!!」
スモーカーが十手をゾロに向かって振り翳す。既の所で刀で防いだ彼に何故自分を助けたのかと問う。
「…船長命令を俺は聞いただけだ、別に感謝はしなくていいと思うぜ。」
「…じゃあ、俺がここで職務を全うしようとも文句はねぇわけだな。」
海賊に助けられたとあっては彼にとって屈辱的だろう。でも言葉とは裏腹にスモーカーからは私達を捕まえようとする意思が伺えない。
「行け。」
「ん?」
「…だが、今回だけだ。俺がてめぇ等を見逃すのはな。次に会ったら命は無いと思え"麦わら"のルフィ。」
スモーカーの意外な言葉に皆驚いているけど遠くの方で海軍の声が聞こえ慌てて駆け出して行く。
「俺、お前嫌いじゃねぇな!しししっ!」
(本当に…この子は。)
笑顔を向けるルフィに思わず顔が綻ぶ。スモーカーもそんな事言われるとは思っていなかったのか目を丸くしていた。
「さっさと行けっ!」
でも、その顔はすぐに険しくなり十手を振り下ろされたルフィは何故怒鳴られたか分からないと言った様子で慌てて駆け出して行った。