第3章 生まれてきてくれて…
エース side
花子に叩かれた頬がジンジン痛む。何をするんだと睨み付ければ、今にも泣き出してしまいそうな顔の花子に言葉を失った。
「そんな事っ…言わないでっ!」
「…。」
「あの人がっ…ロジャーがどれだけあなたの事を思っていたかっ!」
ボロボロと涙を流しながら声を荒げる花子は、凄ぇ苦しそうで…。何でお前がそんな顔をするんだよ。
「鬼の子だからって何よっ!あの人の子供だからって言うのがそんなに悪い事なのっ!?」
「お前に何が分かるんだよっ!」
「分かんないわよっ!でもっ…私はっ!あなたがっ…ロジャーの子供が生まれてきてくれてっ…!」
ぎゅっと唇を噛み立ち上がると花子は息を荒げ声を絞り出した。
「凄くっ嬉しかったっ…!」
「?!」
それだけ言うと花子は涙を拭い走り去っていく。そんなあいつの背中を俺は追う事が出来なかった。
ー泣いて喜ぶやろなぁ…。ー
「くそっ…!」
何で…今キンジの言葉を思い出すんだよ…!俺が生まれてきて喜ぶ奴なんているわけねぇのにっ!
ー凄くっ嬉しかったっ…!ー
でも…そう言った花子の顔は嘘を付いている様には見えなかった…。
ーーーーーー
(全然、眠れなかった…。)
あの後、どうしたら良いか分からずダダンの家に戻ると皆もう眠っていた。俺も布団に入り目を瞑ったが、脳裏に浮かぶのは花子の顔。
(別に…気にする必要ねぇじゃねぇか…。)
俺には関係ねぇ…そう思うのに、あいつを泣かせてしまったと言う事実によく分からねぇ胸のつっかえにイライラする。
「なぁ、エース~!今日、花子来るかなぁ~?」
「…知らねぇ。」
あんな事があったからもう来ないかもしれねぇ。花子が来る事を楽しみにしているルフィには悪いが、今はあいつに会いたくねぇ…。
「あっ!花子だ!」
「?!」
嬉しそうに駆け出すルフィの先には、いつもの笑顔で飛び付くルフィを受け止める花子の姿。
「悪ぃ、ルフィ!俺、ちょっと用事があるんだ!」
「ん?エース!…どうしたんだ?」
「…。」
花子の顔を見るのが怖くて避ける様にして飛び出す。そんな俺を花子が悲しそうな顔で見つめている事何て知らずに…。