第3章 生まれてきてくれて…
ーそう言やぁ、あのゴミクズ野郎には懐刀って言われてる女がいたな!ー
ーあぁ、確か"剣姫"だろ?ー
ー何でも自分の気に入らねぇ奴等は全員八つ裂きにされたらしいぜ!ー
ークズにはクズが集まるんだな!ー
ゲラゲラと笑い声を上げるチンピラ達をエースはボコボコに殴り飛ばした。その"剣姫"が花子?エースはドクドクと脈打つ心臓を落ち着かせる様に押さえた。
「その事…エースには…?」
「今は黙っておいた方がえぇやろ…。花子はんには一応伝えたけど…戸惑っとった。」
「?!」
花子は自分が鬼の血を引いている事を知っている。その事実にエースは悲しそうな顔をしていた花子を思い出す。
(あの顔は…俺が生まれた事を憐れんでいたのか?)
世界最低のゴミと言われている奴の…鬼と呼ばれた奴の血を引く自分を…。ぐっと唇を噛み締めるとエースは何処かへと走り出した。
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花子 side
何だか眠れなくて私は部屋を抜け出すと1人コボル山を彷徨っていた。暫く歩いていると海が見える岬に辿り着き、ポツンと人影が目に映る。
「エース君?」
「…。」
膝を抱え踞る彼は小さな子供の様で、そっと隣に腰を下ろすけど顔は膝に埋めたまま。
「何かあったの?」
「…。」
「こんな遅くに出歩くと皆心配するよ。」
話し掛けても彼は答えてくれず、どうしたものかと悩んでいるとポツリとエース君が口を開いた。
「お前…知ってたんだろ。」
「え?」
「俺が…海賊王の血を引いてる事…お前は知ってたんだろ!?」
「?!」
私を睨み付けるエース君に目を見開く。すると彼は自嘲染みた笑みを浮かべ声を荒げた。
「俺がっ、鬼の血を引いているからっ!だから憐れに思って優しくするんだろ!?」
「なに…言って…?」
「そりゃそうだよなっ!世界中から嫌われてゴミだとっ、大罪人だと言われてきた奴の子だっ!」
顔を歪め必死で何かに耐えるエース君の姿に胸が締め付けられた。この子は今までどんな思いをしてきたのだろう。あの人の事を耳にする度に、どれだけ傷付いたのだろう…。
「俺はっ…生まれてきちゃ駄目だったんだっ!」
「っ!?」
絞り出す様に吐き出されたエース君の悲痛な声。その言葉にカッと頭に血が上り思わず彼の頬を叩いてしまった。