第13章 ユバ・レインベース
翌朝、町を旅立つルフィにトトは1杯の水を差し出す。あの後も掘り続けて湿った土を蒸留した物らしい。貴重な水だろうにそれを渡すトトの思いにルフィは大切に飲むと笑顔で受け取った。
「ルフィ、俺はこの辺で別れるぜ。」
「そっか。」
「えぇ?!行っちゃうの?」
黒ひげがここにいないと分かればもうこの国には用はない。突然のエースとの別れに麦わらの一味は寂しそうにしている。
「ルフィ、これをお前に渡したかったんだ。」
「何だ?これ。」
「そいつを持ってろ。必ず俺とお前を引き合わせる。…いらねぇか?」
「いや、いる!」
「じゃあ、俺はそろそろ行くな。」
エースが差し出したのは何の変哲も無い1枚の紙片。それを受け取り帽子に縫い付けてくれと花子にお願いするルフィを見つめ、エースは彼の仲間の顔をを見渡した。
「出来の悪い弟を持つと兄貴は心配なんだ。おめぇ等もこいつにゃ手を焼くだろうが…よろしく頼むよ…。」
大切な弟だから…。そう微笑むエースの顔はとても穏やかなものだった。
「お前にも渡しとくよ。」
「大切にするわね。」
「エース…行っちゃうの?」
「海にいれば、また何処かで会えるさ。」
花子にも紙を渡し悲そうに眉を下げるユラの頭をエースは優しく撫でその丸い頬にちゅっと唇を落とす。
「花子も…またな。」
愛おしそうに自分を見つめるエースに花子も寂しそうに微笑む。その表情に苦笑いを浮かべエースは彼女の頬にも口付けた。
「え?」
「「「あぁ~?!」」」
「じゃあな!ルフィ!次に会う時は海賊の高みだ!そん時は花子を貰う!」
突然のエースの行動に麦わらの一味は声を上げる。悪戯が成功した子供の様な笑顔でエースは彼等に手を振る。
「じゃあなぁ〜!エースー!後、花子はやらねぇぞっ!」
「あんの野郎っ!?花子さんに何て事をっ!?」
「…。」
去って行くエースを見つめ騒ぎ立てる仲間の声に彼の唇が触れた頬に手を当て花子ははぁ…と溜息を漏らした。
(どうするのよ…この状況…。)