第12章 ナノハナ
ゾロ side
俺が花子に惚れてる?探る様な視線を俺に向けるエースの言葉にガラにも無く戸惑う。
「な…に言ってんだよ。」
「無自覚か…まぁ、俺にとっちゃあその方が都合がいいがな。」
花子はいい奴だ。強ぇし、面倒見もいい。ユラの事になると馬鹿になるがそんなところも好ましくは思う。
「あいつは手強いぞ。なんせ、あいつが惚れた男は…この世で1番厄介な奴だからな。」
「…。」
花子が惚れた男。その言葉に胸の中でモヤッとした不快感が湧き上がる。
「あいつはずっとそいつだけを想い続けているんだからな。」
「…だったら何でそいつと一緒にいねぇんだよ。」
そんなに思ってる奴がいるんなら何で花子は俺等と旅をしてんだ?俺の問い掛けにエースは悔しそうに顔を顰めゆっくりと口を開く。
「…その男は…もうこの世にいねぇんだ。」
「…。」
「惚れた男の最後を目の当たりにしたんだ。そりゃあ、忘れたくても忘れられねぇだろうよ。」
胸糞悪いと苦々しげに吐き捨てるエースに俺の頭に1人の人物が浮かび上がる。
ーあの人を助ける事が出来なかった…。ー
「おい、まさかあいつの惚れた奴って「おっと!話はここまでだ。この先は直接あいつに聞くんだな。」
「おい!」
俺の言葉を遮る様にエースは立ち上がり去り際に俺の肩に手を置きニヤリと笑みを浮かべる。
「あんたが自分の気持ちを自覚するのは勝手だが…最後にあいつを手に入れるのは俺だ。」
牽制する様に真っ直ぐと俺を見つめエースはそれだけ言うとテントに戻って行った。その場から動く事が出来ない俺は"ウイスキーピーク"での花子との会話を思い出す。
ー…お前は、海賊王の事が好きだったのか?ー
ー大好き…だったわ…。ー
「っ…くそっ!」
あいつが海賊王に対して特別な感情を持っている事は気付いていたが、それは船長としてだと思っていた。悲しげに呟かれた言葉。だが、その声の中には確かに愛おしさが滲み出ていた。
「…どうしろってんだよ。」
言い様のない苛立ちに俺は誰に向けるでもない言葉を吐き捨てる。今まで刀しか頭になかった俺はこの感情の名前を知らない。