第12章 ナノハナ
自分を抱き締めるエースの背中に花子は何も言わず腕を回す。ピクッと肩を震わせ彼は腕に力を込める。
「はぁ〜…嘘でも違うって言えよ…。」
「嘘は付けない達なの。」
大きな溜息を漏らし落ち込んだ様子のエースに花子は苦笑いを浮べ背中を優しく叩く。甘える様に擦り寄った後、エースは身体を離し花子の頬に両手を添えじっと見つめる。
「俺…諦めてねぇからな。ぜってぇお前を嫁に貰う。」
「…あなたも物好きね。」
愛おしそうに自分を見つめるエースの顔がルージュを見ているロジャーと重なり、苦しくなる胸を誤魔化す様に花子はきゅっと唇を噛んだ。
「…今、あいつの事考えてただろ。」
「…そんな事無いわ。」
「嘘は付けねぇ達なんじゃなかったのか?」
ムッと顔を顰めエースは彼女の唇を解きほぐす様に優しく親指で撫でる。擽ったそうに口元を緩ませている花子にゆっくりと顔を近付けようとした時。
「ん〜…おか〜さ〜ん…。」
「「?!」」
テントの方から花子を呼ぶユラの声が聞こえた。2人はビクッと肩を震わせ、むにゃむにゃと聞こえるユラの寝言に思わず笑いが込み上げる。
「そろそろ寝るわね。」
「ああ、俺はもう少ししてから寝るとするか。」
スッと立ち上りテントに戻ろうとする花子の腕をエースが掴んだ。何かあるのかと振り返った彼女をエースは力強く引き寄せる。
「っ?!」
「…おやすみ。」
唇に触れた柔かい感触。チュッと軽いリップ音と共に唇を離したエースの顔はトロける程甘く優しいものだった。
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「…起きてんだろ、出て来いよ。」
花子がテントに戻った後、エースは誰かに声を掛ける様に口を開く。パサリと布が擦れる音が聞こえテントから出てきたのは気まずい顔をしたゾロだった。
「盗み聞きとは良い趣味してんな。」
「…こんなに近けりゃ嫌でも聞こえる。」
それもそうかと可笑しそうに笑うエースに対しゾロはムッと顔を顰め彼に近付いて行く。
「…なぁ、あんたは花子の事が好きなのか?」
「あ?仲間何だから嫌いな訳ねぇだろ。」
怪訝な顔で見つめるゾロにエースは大きな溜め息を漏らし呆れた顔で口を開く。
「そうじゃねぇよ…。花子の事、女として惚れてんのか?」