第12章 ナノハナ
エース side
俺はオヤジや皆の反対を押し切り船を飛び出した。キンジにも止めろと言われた。
「頼むから…それ以上、言わないでくれっ…!」
皆が俺の事を心配してくれているのは分かっている。けど、俺はどうしても奴が許せねぇっ!仲間を殺しオヤジの顔に泥を塗ったあいつがっ!
「部下の不祥事は隊長である俺の責任だ。ちゃんとケジメはつけねぇと俺はっ…オヤジに顔向け出来ねぇ。」
それに、俺が奴を追うにはもう1つ理由がある。あれは俺が2番隊隊長になった祝いで宴が開かれた夜、ティーチは俺の隣に腰を下ろした。
ーめでてぇなぁ!エース隊長!ー
ー…ティーチ、本当に良いのか?俺が隊長で。ー
ー俺ぁ出世には興味ねぇんだ!あんたの下につけて嬉しいぜ!ー
嬉しそうに酒を呷るティーチに胸の中にある後ろめたさが少し軽くなった気がした。お互い語り合っている中、奴はふとある事を口にする。
ー俺には欲しいもんが2つあるんだ。ー
ーへぇ、そりゃあどんなお宝だ?ー
ー1つは言えねぇが…もう1つは女だ。ー
ー女?ー
こいつが女を欲しがるなんて珍しい事もあるもんだと、どんな女か尋ねてみれば俺もよく知っている奴だと含みのある笑みを浮かべていた。
ーあんた、花子と知り合いなんだろ?ー
ー…あぁ。そう言やぁ、お前も花子の事は知っているんだったな。ー
ー俺が欲しいもう1つのもんは…花子だ。ー
そう口にした時のティーチの顔は今でも忘れられねぇ。喉から手が出る程欲しいと、黒くギラギラと鈍く光る欲。
ー…あいつは手強いぞ。ー
ー何だ?隊長も振られた口か?ー
きっとティーチはどんな手を使ってでも花子を手に入れにくる筈だ。奴と花子が出会う前に俺がケリをつけねぇと。
「奴は俺が責任もってケジメをつけさせる。だから、お前は待っていてくれ。全てが終わったら必ず会いに行く。」
「…分かったわ。」
俺の決意が伝わったのか花子はそれ以上何も言わず頷いた。でも、その顔は今にも泣き出しそうで俺の胸を締め付ける。
(なぁ…花子、お前は俺が守るから。)
今はまだ、お前より弱いかもしれねぇがお前を傷付ける奴は俺が全て燃やし尽くしてやる。あいつみたいにお前を置いていかねぇ。
(だから…笑ってくれ。)