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海賊王の懐刀

第12章 ナノハナ


夜も更け皆が寝静まった頃、目を覚ました花子は1人テントを抜け外に出た。ヒヤリとした空気が頬を撫で身体を震わせるが不思議と嫌では無いのは、夜空に輝く満天の星が美しいからだろう。

「風邪ひくぞ。」

「エース、ありがとう。」

不意に肩に布を掛けられたが花子は驚く事無く振り返りエースに笑顔を向ける。

「寝れねぇのか?」

「何だか目が覚めちゃって。」

近くにある岩に座る花子の隣にエースも腰を下ろす。入るかと開けられた片腕に一瞬、間を開けるが大人しく従った。

「ふふっ、温かい。ユラが夢中になるのも分かるわ。」

「…俺は湯たんぽじゃねぇぞ。」

そっと寄り添う花子にドクンと心臓が大きく跳ねる。体温がどんどん上がっていくのを感じ、早鐘を打つ胸を悟られない様にエースは平静を装っていた。

「白ひげ海賊団はどう?」

「凄ぇいい奴等だ。末弟だからって餓鬼扱いされんのは鬱陶しいが良くしてくれる。何よりオヤジは…こんな俺を息子だと…家族だと言ってくれた。」

嬉しそうに話すエースを見つめやはり彼に任せて良かったと花子は顔を綻ばせるが、エースは怒りに満ちた様に顔を歪ませる。

「だからこそっ…俺はあいつがっ…ティーチを許せねぇっ…!」

「エース…。」

家族である仲間を殺し白ひげを裏切ったティーチをエースは許せなかった。ギリッと歯を食い縛るエースの手を花子はそっと握り締めた。

「あなたの気持ちはよく分かるわ…大切な人を失った悲しみも、裏切られた怒りも…。」

それでも花子はティーチを追う事を止めてほしかった。白ひげと再会し彼を見た時、言い様のない恐怖を感じた。喜ぶ白ひげを笑顔で見つめるティーチの瞳の奥にある黒く淀んだ何か。

「でもね…彼を「言うなっ…!」

追うのを止めてと口を開こうとした花子の言葉をエースは顔を歪ませ真っ直ぐと彼女の目を見つめる。止めろ、それ以上言うなと目で訴えかけるエースの顔がロジャーと重なり、花子はぎゅっと胸が苦しくなるのを感じ唇を噛んだ。


(ねぇ…ロジャー…。)

(どうした?)

(私…貴方がっ…(言うな。)

(何も…言うな…。)

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