第12章 ナノハナ
ゾロ side
何だ…?何で俺はこんなに苛立ってんだ?花子を抱き締めるエースを見た瞬間、俺の中に不快な感情が湧き上がった。
「エース!ユラは?ユラも可愛い?」
「ん?おお!ユラも凄ぇ可愛いぞ。どっかのお姫様かと思ったぜ!」
花子に抱えられたユラが2人を邪魔する様に顔を出す。花子もエースに抱き締められた事など気にしてねぇのか、馬鹿みてぇに褒めちぎってやがる。
「ユラちゃん、随分エースさんに懐いているのね。」
「…あぁ。」
一緒にいた時間は同じだろうがルフィの兄貴だけあって面倒見がいいのか、ビビの言う通りユラはルフィより奴に懐いている気がする。
「ああして見てると親子みたいね。」
「…。」
「Mr.ブシドー?」
ビビの言葉に心臓が握り潰されたみてぇに苦しくなる。だが、それよりも苛つくのが一瞬俺も同じ事を思っちまった事だ。
(くそっ…!)
理由の分からねぇ感情に振り回され俺は目を背ける様に2人に背を向けた。だから、気付かなかった。
「…。」
エースの奴が…勝ち誇った笑みを浮かべ俺を見ていた事など。
ーーーーーー
エース side
頃合いの所で船を止めると"アラバスタ"の王女様はペットのカルガモを降ろし手紙を渡し、国王にこの国が救える事を知らせてくれと言い付けている。
「海賊が国取りだって?達の悪いジョークだぜ。何か裏があるかも知れねぇな。」
「裏?」
よく知らねぇが王下七武海の1人であるクロコダイルはこの国を乗っ取ろうとしているらしい。俺には関係ねぇ事だが何かきな臭ぇ。
「あんたはどう思う?」
「俺はウチの船長の決めた事に従うだけだ。」
興味無さそうな剣士の兄ちゃんの視線の先には王女様でもカルガモでも無く、花子の姿があった。
「…言っておくが花子は手強いぞ。」
「あ?何で今、あいつが出てくんだよ。」
こいつ…もしかして無意識か?花子を抱き締めた時、俺の背中に刺さる程の鋭い殺気を飛ばしてきやがったのによ。
「いや、忘れてくれ。」
怪訝そうな顔をする剣士の兄ちゃんの視線が花子に移りさっきまでの険しい表情をしていた顔が和らいだ。
(これで気付いてねぇとはなぁ…。)
まあ、何がどうなろうと花子は俺のもんだがな。