第12章 ナノハナ
数ロールの包帯を持ってきたチョッパーは何をするのか分からず不思議そうな顔でそれをゾロに渡した。
「兎に角しっかり絞めとけ。相手は謎が多すぎる。」
「成る程、これを見ればすぐに仲間ってわかるわけね。」
左腕に包帯を巻き仲間を判別すると言うのがゾロの考えだった。敵も同じ様にしたらどうするのかと言う声が上がったが、その包帯の下には仲間の証であるバツ印が刻まれている。
「あなたにしては考えたわね。」
「…馬鹿にしてんのか。」
「褒めてるのよ。」
根っからの武闘派だと思っていたゾロの案にユラの腕に包帯を巻いている花子は、意外そうに口を開いた。
「なぁ!俺は何をしたらいいんだ?」
「出来る事をやればいい。それ以上はやる必要はねぇ。勝てねぇ敵からは逃げてよし!精一杯やればよし!」
「お前それ自分に言ってねぇか?」
「俺に出来る事…。」
目を輝かせ尋ねるチョッパーにウソップが声高らかに言う。彼の言葉を噛み締めたチョッパーはトコトコと花子に駆け寄る。
「花子!俺、頑張る!自分に出来る事!」
「ええ、一緒に頑張りましょうね。」
ふすんっと意気込むチョッパーに顔を綻ばせ花子は彼の頭を優しく撫でる。敵への対策も出来た。後は一刻も早く"アラバスタ"に向かうだけ。
「港が見えます!」
ビビの声に一味は船から身を乗り出す。目に飛び込む港町は"アラバスタ"の玄関口である"ナノハナ"。西の入江に向えば船を隠せると伝えるビビにルフィは仲間を甲板の中央に呼び寄せた。
「兎に角、これから何が起こっても左腕のこれが…仲間の印だ!」
包帯が巻かれている腕を前に突き出すルフィに従って全員も同じ様にする。例え何があろうとも自分達は仲間なのだと誓う様に。
「上陸するぞー!飯屋へ!!あと、"アラバスタ"!」
「「「ついでかよっ?!」」」
「まったく…。」
本能のままに行動するルフィに苦笑いを浮かべるも花子は左腕に巻かれた包帯を優しく撫でる。
(仲間…か…。)
今の自分を見たら彼はどう思うのだろうと、左手首にある金の腕輪を花子は愛おしそうに見つめていた。