第12章 ナノハナ
"アラバスタ"へ航路を進む麦わらの一味は順調に穏やかにとはいかなかった。
「正直に言え、お前が食ったんだろ?」
「食ってねぇよ!」
サンジが"アラバスタ"まできっちり配分した11人分の食糧が忽然と姿を消した。犯人に目星を付けた彼は甲板に正座するルフィを仁王立ちで見下ろす。
「俺じゃねぇよ!証拠でもあんのかっ!?」
「はぁ~…ん?何か口に付いてるぞ?」
「やべぇっ?!」
元々、嘘が付けないルフィは反論するも不自然に口笛を吹き目を泳がせる。そんな誤魔化しがサンジに通用する筈もなく、カマをかけられ明らかに動揺した彼はサンジに蹴り飛ばされた。
「よぉし、お前等〜!頑張って食糧確保するぞぉー!」
「おっおぉー!」
「クエー!」
柵に腰掛け釣り竿を垂らすウソップ、チョッパー、カルー。前代未聞の食糧難に見舞われた一味を救うべく声を上げるが、その口は不自然に何かを咀嚼している。
「…お前等もかっ!!」
それに気付いたサンジはウソップ、カルーの頭に手を置き3人の頭を挟む様に叩き付けた。このままでは本当に全員餓死しかねない。サンジはナミに鍵付き冷蔵庫を購入する様に所望する。
「そぉねぇ〜…。」
「ナミ、買った方がいいんじゃない?私もお金は出すわよ。」
「えっ!花子さん、買ってくれるの♡」
「…。」
特に金の使い道が無いので構わないが完全に買って貰う気でいるナミに花子は苦笑いを浮かべた。
「そう言えば、クロコダイルはもう"アラバスタ"にいるんでしょ?」
「えぇ、クロコダイルは国の英雄だもの。」
彼女曰く、国民からすれば財宝の為に海賊を潰そうが海軍が正義の為に海賊を潰そうが大差ない様だ。結果的に海賊を追い払ってくれるのだから。
「兎に角、クロコダイルをぶっ潰せばいいんだな!」
「まずは暴動を抑えてB.Wを追い出せば"アラバスタ"は救われる…!」
B.Wの組織の仕組みについて説明するビビに皆耳を傾ける。話が終わりふんっと鼻息荒くするルフィが口を開いた。
「そうか~!つまり、クロコダイルをぶっ飛ばせばいいんだな!」
「…お前、全然理解してないだろ。」
間違ってはいないが内容を理解していないであろうルフィにサンジが呆れた声を漏らす。兎にも角にも、まずは食糧を確保しない事には"アラバスタ"に着く前に全員餓死してしまう。