第11章 ドラム王国
花子 side
ルフィ達の治療を終えたDr.くれはの元に私は向かった。知識が豊富な彼女なら何か知っているかもしれない。
「…何の用だい、小娘。」
「貴女に…尋ねたい事があります。」
窓から外を眺める彼女は目線だけを私に移す。手に持っているワインをぐいっと呷ると神妙な面持ちで近付いて来た。
「あたしもね…あんたに聞きたい事があるんだよ。」
「何でしょうか?」
射抜く様な真っ直ぐな目。でも彼女の瞳の奥にはどこか悔いている様な遣る瀬無さを感じた。
「ユラ…とか言ったかい?あの小娘…珀鉛病だろ?」
「?!」
何故、その事を知って?驚愕する私にDr.くれはは襟首から見えた僅かな痣でユラが珀鉛病だと言う事に気付いたらしい。
「珀鉛は失くなった筈だよ。何故あの小娘が珀鉛病にかかっている?」
私は全て話した。ユラの生い立ち、最近ユラが珀鉛病を発症した事。私の話を黙って聞いていた彼女は顔を歪ませ口を開いた。
「いつの時代も…人間ってもんは愚かな生き物だね。」
「お願いしますっ!何か知っているなら教えてくださいっ!お金なら払います!貴女の望むものなら何でも差し出しますっ!だから…!」
あの子を助けて…。
「…珀鉛病を治すには体内にある珀鉛を取り出さなくちゃならない。」
珀鉛病についての資料は残っていない。彼女も独自に研究はしていたらしいが、治す手立ては見付ける事が出来なかった。
「そんなっ…!」
唯一の手がかりさえ空振りに終わった私は絶望に唇を噛む。じゃあ…どうすればいいの?このままじゃユラは…。
ーおかあさん!ー
「あの子はっ、あの祠の中で独りぼっちだったんですっ!やっと…やっと自由になったのにっ…!」
額を床に擦り付け懇願する私を見つめDr.くれはは徐ろに1つの引き出しから何かを取り出すと私の前に膝を着く。
「完治とまではいかないがこれで病気の進行は遅れさせるだろう。」
「?!」
そっと差し出された袋と彼女の顔を交互に見る私をDr.くれはは優しい微笑みを浮かべる。
「ありがとうっ…ございますっ…!」
絞り出す様に呟き頭を下げる私の頭に彼女はそっと手を置く。その優しい温もりに思わず涙が溢れ出した。
「子を持つ親の気持ちは…少しは分かるつもりさ…。」