第11章 ドラム王国
ナミの高熱は【ケスチア】と言う有毒なダニに刺されたのが原因だった。そのダニは絶滅したと確認されており現在ワクチンはほぼ無く、後少し遅ければ彼女は危ない状態だった。
「ナミ、大丈夫?」
「うん!もうすっかり!」
「ナミ〜!良かったよぉ〜!」
Dr.くれはの治療のお陰ですっかり良くなったナミの頭を優しく撫で花子は安堵する。和やかな空気が流れる部屋の扉が開き目を向ければ、少し疲れた様子の小さなトナカイが入って来た。
「トナカイ?」
「体調はどうだ?」
「ありがとう。あんたが看病してくれたんでしょ?」
「う、うるせえなっ!に…人間になんかに礼を言われる筋合いはねぇ!ふざけんなぁ~♪」
にっこり微笑みお礼を言うナミに対してトナカイはギョッと目を見開いた後、声を荒げる。口悪くものを言うものの顔は嬉しそうに緩み恥ずかしそうに身体をくねらせている。
(…可愛い。)
「感情が隠せないタイプなのね…。」
「わぁ~!可愛い!名前は何て言うの?ユラはユラだよ!」
ふわふわモコモコの可愛らしいフォルムが大層気に入ったのかユラは目を輝かせトナカイに近付いて行く。
「かっ可愛くなんかねぇぞ!俺は男だ!そんなこと言われても嬉しくねぇぞ~♪お前なんかに名前なんて教えるかっ!俺は、トニー・トニー・チョッパーだぁ〜♪」
「チョッパー!よろしくね!」
「…名乗ってるし。」
嬉しそうに抱き着くユラにチョッパーは戸惑った様にアタフタしている。言葉と行動が逆の事をしている彼にナミが呆れた表情を浮かべているが、ふと無言のままの花子に目を向ける。
「…尊い。」
「…花子さん、気持ちは分かるけど怖いわ。」
じゃれ合うユラとチョッパーは誰が見ても可愛らしい。ぷるぷると身体を震わせ口元を手で覆い身悶えている花子を見つめ、ナミは若干引いた様に声を漏らす。
「そう言えば、お前達海賊なのか?本物か?ドクロ持ってんのか?」
「海賊に興味があるの?」
ユラを引き剥がす事を諦めたチョッパーは興味深そうに尋ねる。何気ないナミの問いに彼はあからさまにギクリと身体を震わせ動揺していた。
「あんたも来る?海よ!一緒に来ない?」
思わぬ誘いに目を見開いたチョッパーだったがその顔は悲しそうに歪みユラを引き剥がすと部屋を出て行ってしまった。