第10章 リトルガーデン
順調に"アラバスタ"へ向かい航路を進むメリー号。穏やかな空気の中、ピシャリと厳しい声が甲板に響き渡る。
「いい加減にしなさい!」
「だって面倒臭え〜よぉ〜!」
「何だ何だ?」
甲板に寝転がり駄々を捏ねているルフィを見下ろし花子が困った様に顔を顰めている。またルフィが何かやらかしたのかと、呆れながらも見慣れた光景に周りもさして気にする様子は無かった。
「"リトルガーデン"で泥だらけになったでしょ!いい加減、お風呂入りなさい!」
「えぇ〜…。」
(((…成る程。)))
麦わらの一味の男性陣はサンジ以外風呂に関して無頓着だ。良くて週1のペースで酷い時にはもっと日が空く事もざらにある。
「ゾロやウソップだって入ってねぇじゃねぇかぁ〜!」
「2人は昨日入ったの、後はルフィだけよ。」
ルフィ同様、風呂に入る事を面倒臭がった2人に痺れを切らした花子は無言の圧力で風呂場に叩き込んだ。今思ってもあの笑顔は恐ろしかったとゾロとウソップが身震いしていると、ルフィがとんでも無い事を言い出す。
「じゃあ、花子が一緒に入ってくれんなら入る!」
この馬鹿船長は何を言っているのか。そんな事、了承するわけ無いだろうと、呆れ気味に2人の様子を伺っている彼等の常識は覆された。
「まったく…仕方無いわね。」
「やった〜!」
「「「待て待て待て待てっ?!」」」
いいのか?!それで?!嬉しそうに背中にへばり付くルフィを引き摺り風呂場に向かおうとする花子を全員で止める。
「花子さん?!どう言う事か分かってる?!」
「何が?」
「てめっ糞ゴムっ!なんて羨まっ…いや、そんな事許されるかっ!?」
馬鹿ではあるがルフィも子供ではない。ましてや花子は立派な成人した女性だ。恋人同士ならまだしも2人はそんな関係では無い。
「何そんなに慌ててんだよ。」
「流石に駄目だろ…。」
「何でだ?前にも入った事あるぞ?」
あのゾロですら動揺している。何年前の話をしているのかとルフィの頭を叩くナミに対し花子は不思議そうに首を傾げる。
「2年前ぐらいかしら?」
「「「??!」」」
衝撃的な言葉にサンジは鼻血を噴き出し、ゾロ、ウソップ、ビビは言葉を失う。2人の距離感をどうにかせねばとナミは痛む頭を押え項垂れた。