第2章 貴方の宝物
エース side
ゴールド・ロジャーは大罪人。その息子も鬼の子だ。そんな言葉は嫌って程聞いてきた。俺は…生まれてきて良かったのか…?
「またここにおったんか。」
「…キンジ。」
海が見える丘に座り込む俺にキンジがいつもの様にへらへらとした顔で隣に腰を下ろす。
「…何かあったんか?」
「…別に。」
今思えばこいつは俺の事を知っているのか?物心付く時にはいつも俺の側にいてくれた。もし…俺が鬼の子だと知ったら、こいつも離れて行っちまうのか…?
「…なぁ、キンジ。」
「なんや?」
「お前は…海賊王の事をどう思う?」
キンジの顔を見るのが怖くて俺は膝に顔を埋める。お願いだ…お前だけは俺から離れて行かないでくれ…。
「…大っ嫌いや。」
「っ!」
「自分勝手やし、人の大切なもん掻っ攫っていくし。かと思えば泣かせるし…最低最悪な男や!」
「…じゃあ…もし、そいつに子供がいたら?」
顔を見なくても分かる。キンジがどれだけその男を憎んでるのか…。ビクッと肩を震わせる俺の頭にそっと重みが乗る。
「それは関係無いやろ。」
「え…?」
「親が罪人やからって、その子供が罪を被る必要はない。そんな事言うたらこの世は罪人だらけや。」
ぐしゃぐしゃと乱暴に俺の頭を撫でる手付きとは裏腹に、キンジの顔は凄ぇ優しくて…ぎゅっと胸が苦しくなった。
「きっとあん人も同じ事を言う筈や。」
「あの人?」
「ウチの大切な人や。誰よりもロジャーの事を愛して…誰よりも奴の幸せを願っとった…。」
そう言ったキンジの顔は何処か寂しげで…もしかしたら奴に掻っ攫われたって言ってた人はキンジの…。
「そいつがもし、海賊王の息子に会ったら何て言うと思う?」
「泣いて喜ぶやろなぁ~…力いっぱい抱き締めて生まれてきてくれて、ありがとうって…。」
そんな奴、いる筈ねぇ。海賊王の子供は鬼の子だ。でも…もしそんな奴がいるなら…。
「…会ってみてぇな。」
「…いつか会えるやろ。」
目の前に広がる海はいつもより輝いて見えて、俺の心みたいに穏やかだった。