第10章 リトルガーデン
(ユラが…死ぬ…?)
現実を受け止めきるず花子は通信の切れた電伝虫を呆然と見つめていた。珀鉛病は不治の病。国は滅び患者は迫害されていたので病気についての資料は残っていない。
ーユラはおかあさんとずっと一緒にいる!ー
「っ…私がしっかりしないとっ!」
見つからないのなら探せばいい。気持ちを奮い立たせる様に花子は自分の頬をパンッと叩いた。
「?!…朱雀?」
気合を入れ直した花子が勢い良く顔を上げる。ユラに同行させていた朱雀の気配が消え何かあったのかと花子は慌てて甲板に出た。
「…ナミ?ウソップ君?」
甲板にいる筈の2人の姿が何処にも無い。2人の気配に気付かないくらい自分は動揺していたのかと、苦虫を噛んた様に顔を歪め花子は朱雀の気配が消えた方へ飛び出した。
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「苦しみに訴える苦悶の表情こそが私の求める【美術】なのだガネ!」
巨大なキャンドルケーキの上で固まっているゾロ、ナミ、ビビ、ユラを見つめ、男はニタニタと下卑た笑みを浮かべている。その側には"ウイスキーピーク"で会ったMr.5とMs.バレンタイン、そして1人の少女の姿があった。
「何が美術よっ!この悪趣味ちょん髷!よくもブロギー様をあんな目に合わせたわねっ!?あんた達、痛い目みるわよ!?」
愉快そうに高笑いする男にナミが声を荒げる。しかし足を蝋で固定されているのでどうする事も出来ない。試しにゾロが刀を抜いたが思ったより蝋は硬く傷1つ付けることが出来なかった。
「ユラっ!」
絶体絶命の状況の中、ユラの気配を頼りに辿り着いた花子がジャングルから飛び出してきた。ひらひらと雪の様に舞い散る蝋。身動きが取れないゾロ達と巨人2名。4人のB.Wの幹部達の姿に顔を顰めた花子だったが。
「おかあさんっ…!」
「あっ…。」
蝋によって身体を白く染め上げられ今にも泣き出しそうなユラの姿を目にした花子の心臓がドクリと大きく脈打つ。
ー珀鉛病を発症したもんは肌や髪が白くなり、やがて全身に痛みが発生し最後には死ぬ。ー
キンジの言葉を思い出し花子は顔を強張らせた。