第10章 リトルガーデン
花子 side
"フレバンス"に起きた悲劇を知り言葉を失う私をよそにキンジはぐっと息を飲み重い口を開く。
《…珀鉛病を発症したもんは肌や髪が白くなり、やがて全身に痛みが発生し最後には死ぬ。》
「?!待ってっ…!それって…!」
どうか嘘であって欲しいと言う私の願いは無情にも打ち砕かれた。
《…ユラは…珀鉛病や。》
「っ…でもっ、ユラがいた所はイーストブルーよ!?それにっそんな物何処にもっ!」
《ユラが閉じ込められとった祠があるやろ?あれが珀鉛やったんや。》
「医者はっ!?何処かに珀鉛病を治せる医者はいないの!?」
《"フレバンス"の生き残りもおらん。珀鉛病の治療法も見つかっとらんのや…。》
突き付けられた現実に頭が真っ白になる。このまま治療法が見つからなかったらユラは…。
《せやけどあれから時間は経ったんや!もしかしたら、治療法が見つかるかもしれん!》
「でも…もし見つからなかったら…?」
《あんたがそんな弱気でどないするんや!1番辛いのはユラなんやで!花子はんが支えんで誰がユラを支えるんやっ!》
ーおかあさんっ!ー
絶望に打ちひしがれる私の脳裏に浮かぶのは幸せそうなユラの笑顔…。お願い…私の命ならいくらでも差し出すからっ…!
(だから…どうか…。)
私から…あの子を奪わないでっ…。
ーーーーーー
キンジ side
何か分かったら連絡すると伝え通信を切ったウチの胸はでっかい石が詰まった様に重く苦しかった。
ー私から…あの子を奪わないでっ…。ー
「あ"ぁ〜…糞っ垂れが…!」
やっと…やっと花子はんに笑顔が戻ってきたんに…何で神さんはまたあん人を傷付けるんやっ!?
ー俺はあいつの笑顔が好きだ。だからよ…俺が死んだらお前が花子を笑顔にしてやってくれ。ー
(…どの口がほざいてんねん。)
花子はんを笑顔に出来んのも…幸せに出来んのも…お前しかおらんやろ…。
「っ…やったろうやないかいっ!」
お前に言われんでもウチが花子はんをぎょうさん笑顔にして幸せにしたるわっ!精々、地獄で指くわえて見とけやっ!
ーあのね、キンジ。私、今凄く幸せよ。ー
もう1度…あの笑顔が見たいんや…。