第10章 リトルガーデン
花子 side
ユラの症状を伝えた時、明らかにキンジの様子がおかしかった。もう少し詳しく調べてから連絡すると言っていたけど、彼の事だから確信はついている筈。
ぷるぷるぷっがちゃっ
《ほいほい、どないしたんや?》
電伝虫から聞こえてくるキンジの声はいつもの明るいものではなく元気がない。
「キンジ、さっきの事だけど…。」
《んもう〜、花子はんはせっかちさんやなぁ〜!ちゃあんと調べるさかいもう少し待っときぃ〜。》
「…キンジ。」
いつもの調子で戯けてみせているけど、そんなので私が誤魔化される訳ないでしょ。語気を強めた私にキンジは言葉を飲み込みはぁっと大きな溜息を吐いた。
《…先に言っとくんやけど、ユラにも…あんさんにとっても辛い現実になるで。》
「話して。」
ユラのあの痣には何かあるの?真剣なキンジの声に私は苦しくなる胸を押え頷く。
《…珀鉛って知っとるか?》
「…いえ、聞いた事無いわ。」
《その昔、ノースブルーに"フレバンス王国"っちゅうそれは美しい国があった。》
その国は地層から採掘された【珀鉛】と言う鉛を一大産業として栄え、国全体が白一色に覆われており、"白い町"と呼ばれ嘗ては人々の憧れの町だった。
《…せやけど、その国は滅びたんや。》
「海賊にでも襲われたの?」
《いんや。…珀鉛は毒やったんや。》
鉛に含まれる毒は過度に掘り起こす事で人体に悪影響を及ぼす。やがて国民が遺伝による毒の蓄積により一斉に珀鉛病を発症した。
《珀鉛病は伝染病やない。遺伝や毒の蓄積から発症するもんや。せやけど、そんなん知らん周辺諸国は他国への通路を封鎖し、治療の為亡命しようとした人等を迫害し射殺した。》
「その国の王族は何もしなかったの?」
国民が苦しんでいるのにその国の王は何をしていたの?
《…逃げたんや。》
「逃げた?国民を置いて?」
《王族と世界政府は産業が始まる100年以上も前からその事実を知っとった。せやけど、珀鉛が生み出す巨万の富に目が眩み事実を隠蔽したんや。》
欲の為に国民を危険に晒してあっさりと見捨てるなんてっ…!
《自分達の悪事がバレる事恐た世界政府もこの事態の解決に一切走らんかった。生き残った国民が抵抗し戦争勃発。これ幸いと反撃を口実にした周辺諸国から一斉攻撃を受け"フレバンス"は滅亡した。》