第10章 リトルガーデン
麦わらの一味が辿り着いた"リトルガーデン"は島全体が木々に覆われた緑豊かな島だった。
「サンジ〜!海賊弁当まだかぁ〜!」
「ほら、出来たぞ。…たく、少しは待てねぇのか。」
「ごめんね、サンジ君。」
直ぐにでも冒険へと飛び出して行きたいのかウズウズと浮足立つルフィに、呆れた顔のサンジが弁当を差し出す。
「花子も来たかぁー!早く冒険に行こうぜ!」
「…。」
「おかあさん?」
バビュンッと効果音が付きそうな勢いでルフィが花子に飛び付く。いきなり飛び付くなといつもなら小言が聞こえてくる所だが、彼女から反応は無くユラは不思議そうに花子を見上げる。
「…ごめんね、ルフィ。私は船に残るわ。」
「ええーっ?!」
「やっばりそうよねっ!花子さんっ!」
「お前なら俺の事を見捨てねぇと思ってたぞ!」
キンジからこの島の事は聞いていたし特に危険な様子は無い。自分の代わりにユラを連れて行ってくれと申し出る花子に、ルフィは不満そうな顔をしナミとウソップは泣いて喜んでいる。
「…おかあさん、来ないの?」
「ちょっとキンジとお話してくるわ。大丈夫、用事が終わったら直ぐに追い掛けるから。」
「えっ?!花子さん、いてくれないの?!」
「おい、花子っ…!俺を見捨てるなぁっ!?」
ずっと一緒に居てくれる訳では無いと知り、この世の終わりの様な顔をする2人。ユラの頭を撫でると花子は親指を噛み掌を甲板に叩き付けた。
『主、何用だ?』
「あの時の綺麗な鳥!?」
「よぉ〜、朱雀〜!」
白煙の中から現れた朱雀はへばり付いてくるルフィに鬱陶しそうな顔をしながら、自分が合流するまでユラの面倒を見て欲しいと頼む花子に頷いた。
「それじゃあ、お願いね。」
『任せよ。』
「おかあさん、早く来てね…。」
朱雀が一緒にいるとしてもやはり花子が側にいないと不安なのだろう。眉を下げ見上げてくるユラをギュッと抱き締め花子は額にキスを落とす。
「大丈夫よ、お話終わったら直ぐに向かうから。」
楽しんでおいでと笑顔を見せる花子にユラも笑顔で頷き甘える様に彼女の首に腕を回し頬を寄せた。