第10章 リトルガーデン
"リトルガーデン"を目指し船を進める麦わらの一味からは穏やかな空気が流れている。
「いいの?!こんなので!」
「悩む気も失せるでしょ、こんな船じゃ。」
B.Wの刺客に狙われていると言うのにこの落ち着きよう。ビビの不安をよそにナミは彼女に笑顔で飲み物を渡す。
「えぇ…随分、楽…。」
自分のせいで危険な目に合わせてしまっていると言うのに、底抜けに明るい雰囲気の彼等にビビの顔にも笑顔が戻る。
「そう言えば花子さんは?」
「ユラとお風呂に入っているわ。」
辺りを見渡しても彼女の姿は無く首を傾げるビビにナミが答える。
「彼女はずっとこの船に?」
「割りと最初の方からね。ルフィとは元々知り合いだったみたいだけど。」
花子と出会って2年が経つ。初めは彼女の事を警戒していたが、今思えばあの時花子と出会っていて良かったとナミは懐かしそうに顔を綻ばせた。
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花子 side
色々とバタバタしてたからゆっくりお風呂に入れて良かったわ。スポンジにボディーソープを混ぜ泡立てているとユラが目を輝かせ見つめている。
「モコモコだぁ〜!良い匂い〜!」
「ふふっ、食べちゃ駄目よ?」
蜜柑の香りがするボディーソープは最近ユラのお気に入り。鼻を刺激する甘酸っぱい香りに自然と気持ちが穏やかになる。
「?…何かしら、これ。」
シャワーで泡を洗い流しているとユラの左腕の内側にコイン代の白い痣が目に入る。泡とは違うみたいだし、汚れって言う訳でもなさそうね。
「何処かでぶつけたのかしら…痛くない?」
「ん?大丈夫だよ。」
軽く痣を押してみるけど痛みは無いみたい。怪我にしては色がおかしい…。
(後でキンジに聞いてみましょう。)
今のところ身体に異常は無いみたいだけど何かの病気だったら大変ね。一抹の不安が頭に過るけどこの時、私は事の重大さに気付かずにいた。
(モコモコ〜ふわふわぁ〜!)
(ほら、ちゃんと目を瞑らないと入るわよ。)
(うん!おかあさんはユラが洗ってあげるね!)
(ふふっ、ありがとう。)可愛い…!