第9章 ウイスキーピーク
天使の様な微笑みで悪魔の囁きが聞こえる。尚も食い下がろうとしているゾロに対しナミは呆れた様な溜息を1つ漏らす。
「あんた…約束の1つも守れないの?」
「っ?!」
「花子さんも約束も守れない男なんて嫌よね?」
「ん?…確かに誠実な人は素敵だと思うけど。」
「っ?!」
言葉のナイフがゾロの胸にグサグサと突き刺さる。花子に関しては思った事を口にしただけなのだろうが、約束と言う言葉は彼にとって特別な様だ。
「折角今回の事でチャラにしてあげようと思ったのに。」
「…てめぇ、碌な死に方しねぇぞ!」
「そうね、私が落ちるのは地獄かもね。」
口でナミに勝てる筈も無く悪態をつきながらゾロはビビの去った方に駆け出して行った。
「本当に…感謝致す…。」
地面に倒れ息も絶え絶えなイガラムは噛み締める様に呟き、怪我を手当しようとナミにユラを預ける花子に彼は視線を送る。
「して…花子殿、ビビ様から聞いたのだが…貴女はあの剣姫殿なのか?」
「…そうね。」
花子がこの時代に来る前にイガラムと彼女は面識があった。しかし、姿が変わっていない花子にイガラムは信じられないと言う様に眉を顰める。
「…冗談で言ったつもりだったのに、まさか本当に髪に銃を仕込むとはね。」
「?!」
可笑しそうに顔を綻ばせながら手当をする花子にイガラムは目を見開く。それは、彼がある人物に武器を仕込むなら何処が良いか尋ねた時。
ーそんな立派な巻き髪なんだからその中に銃を仕込んだら?ー
「…っ、お久しゅうございますな。」
「元気そう…ではないだろうけど、また会えて嬉しいわ。」
懐かしそうに微笑み合う2人の雰囲気にナミが首を傾げていると、遠くの方からルフィとゾロの言い合う声が聞こえてくる。
「俺はお前を許さねぇー!」
「いい加減にしろ!?」
「あら、ルフィ起きたのね。」
「…あいつ等、何やってんのよ!?」
王女を助けるつもりが何故彼等が喧嘩をしているのか。このままでは10億ベリーが無しになってしまうと、花子にユラを預けナミは彼等の元へ慌てて駆け出した。
(ん〜…おかあさん…?)
(あら、ユラも起きたの?)おはよう
(うん…なんでお外…?)おはよう
(…王女は大丈夫なのか?)不安だ…