第9章 ウイスキーピーク
賑やかな宴は幕を閉じ辺りは静寂に包まれる。聞こえるのは夢の中に旅立った麦わらの一味の寝息だけ。そんな中、ムクリと起き上がったのは1番最初に眠りに落ちたゾロだった。
「…たくっ、呑気なもんだぜ。」
幸せそうな寝顔の仲間を見つめ呆れた表情で呟く。どうやら彼は海賊を歓迎する町の者達を怪しく思い敢えて潰れたふりをした様だ。
「…何処に行きやがった?」
辺りを見渡しても町の者達の姿はなく不穏な空気を感じたゾロは警戒しながら姿を消した。
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「騒ぎ疲れて眠ったか…冒険者達よ。」
輝く月を見上げ呟くイガラッポイの背後には、麦わらの一味と同乗したMr.9とMs.ウェンズデーが控えていた。Mr.9が彼の事を【Mr.8】と呼んだところをみるに彼等は仲間の様だ。
「…彼等は?」
「堕ちたよ…地獄へな。」
冷たい表情を浮かべるMr.8。怪しげな会話をしている彼等に店の裏口から出てきたシスターが疲れた様な顔を見せた。
「…まったく…奴等、余りにもしぶといから飲み物にお酒を混ぜて飲ませてやったよ。」
修道服を脱ぎ捨て鍛え上げられた筋肉を惜しげも無く曝け出す彼女は何故、港で倒さなかったのかと愚痴を零す。只でさえこの町は食料に困っているのだから無駄な消費は避けたい様だ。
「これを見ろ、奴等については調べておいた。」
Mr.8は1枚の手配書を取り出す。それはつい最近出たルフィの手配書。呑気に宴を楽しんでいた彼等が3千万ベリーもの海賊だと知りMr.9達は驚愕する。
「海賊共の力量を見かけで判断するとは愚かだな、Ms.マンデー。」
「…面目無い。」
「だが、これでボスにも良い報告ができそうだ。」
殺してしまえば賞金が3割も下がってしまう。船の金品を奪い生け捕りにしろとMr.8が彼等をけしかけ様とした時。
「なぁ、悪いんだがあいつ等寝かしといてくれねぇか?昼間の航海で疲れてんだ。」
「「「?!」」」
声のする方に目を向ければ建物の上に鎮座し自分達を見下ろすゾロの姿。
「貴様!酒で潰れた筈では!?」
「剣士たるもの、どんな状況でも酒に呑まれる様な馬鹿はやらねぇもんだ。」
自分達の話を聞かれていたとなれば計画が水の泡だ。顔を歪める彼等にゾロはニヤリと笑みを浮かべた。
「つまり、ここは賞金稼ぎの巣だって事か。相手になるぜ!B.W!」