第9章 ウイスキーピーク
島への上陸を決めた麦わらの一味はゆっくりと船を進めて行く。霧が濃く視界の悪い中、辺りを警戒していると島の方から人の声が聞こえてきた。
「「「ようこそ!歓迎の町!"ウイスキーピーク"へ!」」」
「なっ何だっ?」
「どう言う事?」
少しずつ霧が晴れていき声のする方に目を向けると、そこには島民と思われる複数人の影。そして、一味を歓迎するムードに戸惑うゾロとナミだったが。
「感激だ!海賊ってのはヒーローなんじゃねぇか?!」
「うお~い!」
海賊が島に来たら普通なら警戒するところなのだが、そんな様子が見受けられない島民達にルフィ、サンジ、ウソップは感激した様に大はしゃぎしている。
「いら"っ…!ゴホン、マーマーマーマーマ〜!いらっしゃい。私の名はイガラッポイ。」
カーリーヘアーを3段に重ねた独特な髪型をした男が満面の笑みを一味に向ける。どうやら彼がこの町の町長の様で、遥々来た客人を饗したいと申し出る。
「「「喜んで!」」」
「ねぇ、この町はどれくらいでログが貯まるの?」
「ログ?そんな堅苦しい話は止めて、どうか旅の疲れを癒してください!さぁ、皆!宴の準備だ!」
一目散に町へ駆け出した3人は放って置くとして、ログの事を尋ねるナミに誤魔化す様な態度を取るイガラッポイを花子はじっと見つめていた。
「さぁ!貴女も是非、宴の席に!」
「…そうね。」
ナミとゾロも船を下りてしまったし、ここにいても仕方が無いと花子はユラを抱え船から飛び降りた。
「この町の人達は随分と海賊に寛容なのね。」
「我々はこの町に来ていただいた方皆様がお客様です!海賊など関係ありません!」
見た目は奇抜だがイガラッポイは優しい町長に見える。しかし、花子は彼の雰囲気に違和感を感じていた。
「…そう言えば、ここに男女2人組が来なかったかしら?」
「…何かございましたか?」
「別に何があったわけじゃないの、…只。」
ーその女性に見覚えがあっただけ。ー
そう言った時、イガラッポイの顔が一瞬強張った事を花子は見逃さなかった。
(さぁさぁ!旅の疲れを癒やしてください!)
(んぐっんぐっ…おぉ~!花子〜!遅かったなぁ!)
(…ルフィ。)
(うめぇぞ〜!ここの飯!)