第9章 ウイスキーピーク
途中、船の進路がズレてしまい嵐の中、一味はバタバタと駆けずり回っていた。やっとの思いで進路を正した頃には疲労で皆甲板に崩れ落ちている。
「くあぁ~…寝た。ん?…おいおい、いくら気候が良いからってダラけ過ぎだぜ。進路はちゃんと取れてるのか?」
(((殺すっ…!)))
大きな欠伸を溢しながら甲板に横たわっている仲間にゾロが呆れた様子で声をかける。あの悪天候の中、何度も起こしても目を覚まさなかった彼に全員の殺意が集中する。
「ん?お前等、まだいたのか。」
「「ツッコムとこそこぉっ?!」」
強制的にナミに手伝いをさせられた同乗者2人も力無くその場に座り込んでいた。疲労困憊の仲間よりどうやら彼等の方がゾロは気になっている様子。
「あぁ〜…お前等、名は何つったか?」
「…Mr.9。」
「…Ms.ウェンズデーと申します。」
探る様なゾロの視線に2人は居心地悪そうに尻込みしながら答える。3人の会話を聞いていた花子はその名にピクリと眉を動かせる。
「どうもその名を聞いた時から、引っ掛かってたんだよなぁ。聞いた事ある様な…無い様な…。まぁ、いずれにしろっ…だはぁっ?!」
まるでチンピラの如くしゃがみ込み顎に手を添えしげしげとゾロは2人の顔を見つめる。結局、思い出す事は諦めたのかニヤリと笑みを浮かべたゾロの額が突然、甲板に激突した。
「あんたっ…よくもまぁ呑気に寝てたわね…。起こしても起こしても…ぐーぐーとぉ…!」
「あ"ぁっ?!」
ゾロの背後には拳を握り締め鬼の形相で仁王立ちしているナミの姿があった。大変な時に寝こけあまつさえダラけていると言われ彼女は憤慨していた。勿論、見に覚えのない仕打ちにゾロも鋭い眼光でナミを睨み付けたが…。
「…っ!っ…?!」
「気を抜かないで、皆!まだ何が起こるか分からない!」
当然、怒りに満ちた彼女に敵う筈もなくお叱りを受けたゾロの頭には2つのタンコブが追加された。
「おかあさん、大丈夫?」
「えぇ、大丈夫よ。ユラは?何処も怪我してない?」
痛みに頭を抱え身悶えるゾロに自業自得だと、心の中で悪態を付く花子にユラが心配そうに駆け寄る。天候が荒れ安全な船内にユラを避難さはしたものの、船は大きく揺れ転がり回っていないか心配していたが、思いの他元気そうな様子に花子はホッと胸を撫で下ろした。