第9章 ウイスキーピーク
花子 side
双子岬を出て暫く経った。グランドラインの天候は変わりやすく今は雪が降り積もっている。
ぷるっがちゃっ
「もしも《花子はぁん〜!何しててんっ!全っ然、連絡くれへんやぁんっ…!》
「…キンジ。」
無事グランドラインに入った事を連絡しようと電伝虫を手に取ると、1秒も経たない内に通信は繋がりキンジの声が聞こえてくる。
「無事、グランドラインに入ったわ。」
《無視っ?!…んで、今は何処に向かってんねん?》
「色々あってね、今は「よっしゃ!できた!空から降ってきた男【雪だるさん】だ!」
「おぉ~!凄ぉい!」
…皆、私の声遮るの好きね。"ウイスキーピーク"に向かっている事をキンジに伝えようとした時、外からルフィとユラ、ウソップ君の楽しそうな声が聞こえてくる。
《楽しそうやなぁ…。》
「グランドラインの天候は予想出来ないからね。今は雪が降っているわよ。」
初めて見る真っ白な雪に自分が閉じ込められていた場所を連想したのか、最初ユラは怯えていたけどルフィ達のお陰で楽しそうにしている。
《ええなぁ〜ええなぁ〜…!》
「ふふっ、寂しい?」
《当たり前やないのっ!》
楽しそうなユラ達の声に羨ましそうな声で電伝虫は目玉をへにょんと項垂れさせている。
「私もね…キンジに会えなくて寂しいわ。」
《…。》
騒がしい時もあるけど明るく元気なキンジに私はいつも助けられていた。ここも賑やかだけど彼の声を聞けない事に何だか物足りなさを感じてしまう程に。
「そうそう。今、私達は"ウイスキーピーク"に《もっかい言ってぇっー!?》
「…。」
《何なんっ?!めっちゃ可愛えぇ!花子はん、デレ!?うわっ!録音し忘れたっ…!お願いやっ!もっかい言ってぇなぁっ!》
突然、電伝虫はカッと見開いた目玉を血走らせ興奮した様に叫び出したかと思うと、今度は悔しそうにバシバシと小さな手で机を叩いている。
「…報告は以上よ。」
《もうツンに戻ったぁ?!ホンマ忙しいお人やなぁ…。》
「あなたに言われたくないわよ。」
本当に…本当に少しだけだけど、こうしてキンジの声を聞く事を楽しみにしている事は私だけの秘密。
(それじゃあ、また連絡するわね。)
〘えぇ〜…もう終わりなん…?〙
(…もう少しお話する?)
〘っ…もう…好きっ!〙