第8章 双子岬とアイランドクジラ・ラブーン
「ねぇ、花子さん。あの人って誰?」
もう見えなくなってしまった双子岬を見つめる花子にナミが先程の言葉を思い出し声をかける。
「花子さん、元々海賊だったんでしょ?…もしかして、その船長の事?」
「…そうね。」
花子が元海賊だった事以外ナミは何も知らない。しかし、"ローグタウン"での彼女の表情にナミは疑問を感じていた。
「これからずっと一緒にいるんだもの。ちゃんと話さないとね。」
ーーーーーー
グランドラインにあるとある島に1人の男が訪れた。彼はジュラキュール・ミホーク。王下七武海の1人であり世界一の剣豪と謳われた男。
「…よぉ…鷹の目…勝負でもしに来たか。」
「ふん…何度も言わせるな。左腕を失った貴様と今更決着を着けようとは思わん。」
岩に腰掛け彼を鋭い眼光で見据えるのは四皇の1人であり赤髪海賊団の船長"赤髪"のシャンクス。彼とミホークはライバル同士であり、過去に伝説と謳われる程の決闘を繰り広げていたが、シャンクスが左腕失いその決着は着く事はなかった。
「だったら何の用だ…俺は今気分が悪い…。」
「そうか、お前に良い知らせ持ってきたのだがな。」
シャンクスから醸し出される威圧感に周りの者はゴクリと息を飲む。緊迫した空気など気にする事無くミホークは彼に近付き1枚の写真を取り出す。
「?!おいっ、これはっ!?」
「あいつは…生きていた。」
その写真にシャンクスは目を見開き顔を上げる。狼狽える彼をおかしそうに口元を上げるミホークだったがその表情は何処か嬉しそうに見えた。
「まだ確かでは無い情報に海軍は内密に事を進めている様だが…俺とお前が見間違う筈がない。」
「…そうかっ…!」
くしゃりと両手で握り締めた写真を額に擦り付けシャンクスは絞り出す様に呟いた。その写真に写っていたのはあの時助けられなかった花子の姿。
「お前等っ!宴だっ!酒を持って来い!」
「お頭…あんた、さっきまで二日酔いで苦しんでただろう…。」
「これが飲まずにいられるか!鷹の目!お前も飲めっ!」
急に元気を取り戻したシャンクスに副船長のベン・ベックマンが呆れた表情を浮かべる。
ーシャンクス。ー
(会いてぇなぁ…。)
晴れ渡る空を見上げシャンクスは彼女の笑顔を思い出し、嬉しそうに顔を綻ばせていた。