第8章 双子岬とアイランドクジラ・ラブーン
「そろそろログが貯まる頃だろう。海図通りの場所を示したか?」
「うん、大丈夫!"ウィスキーピーク"を指してるわ。」
ログも溜まりルフィが壊した船の修繕も終わった所で麦わらの一味は出航の準備を始める。
「ルフィ、あの2人も同行するの?」
「おぅ!次の島まで乗っけて欲しいんだって。だから乗せる!」
「…そう。」
花子の目線の先には2人の男女。彼等はラブーンの腹の中で出会った者達らしいが、帰りの船も無く同行させて欲しいと申し出たらしい。
「いいのか?あんな奴等の為に"ウィスキーピーク"を選んで。航路を決められるのはこの場所だけだぞ。」
「いいよ。気に入らねぇなら、もう1周するし。」
「そうか…。」
ルフィにとって次に目指す場所は余りこだわりはないのだろう。ケロッとした顔で言う彼に苦笑いを浮かべクロッカスは花子に声をかけた。
「花子、お前にまた会えて良かった。」
「私もです。」
嬉しそうに微笑む花子にクロッカスは柔らかい笑みを浮かべ彼女の腕に抱かれているユラに視線を移す。
「ユラも元気でな。」
「うん!おじさんもね!また、おかあさんのお話聞かせて!」
「そんな事で良かったらいくらでも聞かせてやるぞ。」
「…程々にしてください。」
ユラの生い立ちを聞いたクロッカスは優しく彼女の頭を撫でる。花子が時を越えユラに出会ったのは運命だったのかもしれないと。
「お前はまだ幼いのだからもっと甘えて良いんだぞ。」
「うん!」
「花子も…大切なこの子を悲しませるんじゃないぞ。」
「…肝に命じときます。」
真っ直ぐな瞳で頷くと花子はメリー号に乗り込む。船が出航し別れを告げるルフィ達にクロッカスは眩しいものを見るように目を細める。
「クロッカスさんっ!」
若者達の新たな門出を見送る彼に花子が声を上げる。
「私っ…もう間違わないっ!あの人が生かしてくれたこの命っ…精一杯生きますっ!」
「?!…あぁ!行って来い!」
そう微笑む花子にクロッカスは一瞬目を見開き懐かしそうに顔を綻ばせる。彼女の顔はロジャーと共に海を渡っていた頃の様にキラキラと輝いていた。