第8章 双子岬とアイランドクジラ・ラブーン
「まともに己の位置すら掴めないこの海では、ログポースの示す磁気の記録だけが頼りになる。最初はこの山から出る7本の磁気より1本を選べ。その磁気は例え何処の島からスタートしようともやがて引き合い1本の航路に結びつく。そして最後に辿り着く島の名は…。」
「…"ラフテル"。」
「そうだ。グランドラインの最終地点であり、その島を確認したのは海賊王の一団だけだ。伝説の島だ。」
クロッカスは昔を懐かしむ様に青い空を見上げる。そんな彼に花子はふと顔に影を落とした。
「…そこに行けばあんのか?ワンピースは?!」
「さぁな。その説が最有力だが誰も辿り着けておらん。」
「そんなもん行ってみりゃわかるさ!」
まだ誰も辿り着いた事の無い未知の島に目を輝かせるルフィにクロッカスは顔を綻ばせ花子に近付く。
「花子…彼等にはお前の事を話して無いのか?」
「ルフィには…他の皆にも話さないといけないんですけどタイミングを逃してしまって…。」
正直に言うと、まだ彼等に自分の事を話すのが少し怖い。もし、自分の事を話したら彼等は今まで通りに接してくれるだろうか…。
「ねぇねぇ、おじさん!」
「ん?何だ?」
「おじさんは、おかあさんの事知ってるの?」
コテンと可愛らしく小首を傾げるユラにクロッカスは顔を綻ばせ頷く。
「おかあさんはどんなだったの!?」
「そうだな…年のわりには大人びていたが…ロジャー…あいつの事になると手が付けられなかったな。」
「…止めてくださいよ。」
花子の事が聞けて嬉しいのだろ。目を輝かせるユラとは裏腹に花子は居心地が悪そうに顔を背ける。
「じゃあ…その人は…おかあさんを大切にしてくれた?」
彼の事を話す花子は幸せそうだがユラには寂しげに見えた。不安そうな顔で自分を見上げるユラの頭をクロッカスは優しく撫でる。
「あぁ…あいつは花子の事を誰よりも大切に思っていた。」
ロジャーはいつも花子の事を思っていた。自分といて幸せなのか…無理矢理縛り付けているのではないかと…。
「おのれ糞ゴム!俺はナミさんと花子さん達にもっとっ…もっと食って欲しかったんだぞ!コラァ!」
穏やかな空気が流れる中、サンジの怒号と共にパリンと何かが割れる音が聞こえた。