第8章 双子岬とアイランドクジラ・ラブーン
使い物にならなくなったコンパスを見つめナミは顔を青くさせる。このグランドラインを方角を示すコンパス無しで進む事は死を意味する。
「落ち着いて、ナミ。」
「何だ、お前達。ログポースを持っておらんのか?」
「ログポース?」
「…花子。」
キョトンとするナミの表情に何も教えなかったのかと言いたげな目で自分を見つめるクロッカスに花子は完全に忘れていたのか気まずそうに視線を泳がせる。
「そのコンパスは壊れとる訳ではない。言っただろう、この海で常識は通用せん。」
「まさか…磁気が?」
「そうだ。グランドラインの島々には色んな鉱物が含まれておる。そのせいで全域に磁気異常がおきる。」
「そんな!方位を示す事が出来なければ、絶望的じゃない!」
本当に何も知らずに来たのかと呆れ溜息を漏らすクロッカスをよそにナミは唖然とし俯く。
「しっ知らなかった…ドンマイ!ドンマイ!」
「おい!どうするんだよ!まずいだろ!」
「知らないナミさんも素敵だ~!」
「何かまずいのか?」
「あんたは黙ってて!」
「鼻がうめぇぞ!エレファントホンマグロ。」
いざとなれば自分が朱雀で"ローグタウン"まで行って買ってくれば良いかと、さして気にする様子の無い花子がサンジの作った料理に手を付けようとした時、ルフィがゴソゴソと自分の懐を漁り始める。
「そう言えば、こんなの拾ったぞ!」
「何だ、ちゃんと持っているではないか。」
彼の手に握られているのはベルトに透明な球体が付いたコンパス。それは今彼等が探し求めていたログポースだった。
「ちょっと待って…!何であんたが持ってんのよ!」
「クジラの腹の中にいた時、変な2組が落としてったんだよ。」
「これで無事に航海が出来るわね。」
「あぁ。ログポース無しのグランドラインの航海は不可能だからな。それに入手も困難だ。」
ルフィからログポースを受け取り腕に着けたナミは中心で指針が揺れるそれを不思議そうに見つめている。
「これ…何の字盤も無い…。」
「字盤なんて必要ないのよ。グランドラインは島と島が引き合う磁気があるから、それをログポースに記憶させれば次の島へと導いてくれるの。」
一先ずこれでグランドラインを無事に渡れる事が出来る。変な2人組は気になるが花子はホッと安堵の表情を浮かべた。