第8章 双子岬とアイランドクジラ・ラブーン
「うぉー!!」
クロッカスの話を聞き終えた時、ルフィが雄叫びを上げながらラブーンの身体を駆け上がっている。彼の腕には何処から持ち出して来たのか大木が抱えられていた。
「何をしてるんだ?あの馬鹿は…。」
「山登りでもしてんのか?」
ルフィの理解不能な行動に呆れながらも何をするのか眺めていたら、彼はその大木をラブーンの額に突き刺した。
「"ゴムゴム"の~…生け花~!!」
激痛に暴れ狂うラブーン。その額からは大量の血が吹き出していた。
「…ありゃぁ…マストじゃないか?うちの船の。」
「…メインマストだ。」
しかもラブーンの額に刺さっているのはメリー号のメインマスト。それに気付いた一味は驚愕し奇声を上げる。
「「「何しとんじゃ!お前はー!?」」」
「船壊すなよー!?」
「引き分けだ!俺は強いだろ!!」
ふんっと鼻を鳴らし叫ぶルフィに訳が分からずラブーンも困惑している様子。
「俺とお前の勝負はまだ着いていない!だから、俺達はまた戦わなきゃならないんだ!お前の仲間は死んだけど俺とお前はライバルだ!俺達がグランドラインを1周したら、またお前に会いに来るから!そしたらまた喧嘩しよう!」
約束だと笑顔を見せるルフィに大きく見開かれた目から涙を溢れさせラブーンは雄叫びを上げる。
「おかあさん…ラブーン、嬉しいって!約束だって言ってる!」
「…そう。」
ーお前の帰りを待っているぞ。ー
(約束…か…。)
1度は果たされなかった約束。もし、ルフィの身に何かあってもラブーンはまたいつまでも彼の帰りを待ち続けるだろう…。嬉しそうに顔を綻ばせるユラに対し花子は悲しげな表情を浮かべる。
ーーーーーー
「よし!これが俺とお前の友情の証だ!また頭ぶつけて消すんじゃねぇぞ!」
約束を交わしたルフィはラブーンの額に麦わら帽子を被ったジョリーロジャーを描いた。何とも歪な形をしているがラブーンは嬉しそうに声を上げる。
「あぁーっ?!」
「何事っすか~?ナミすわぁん!食事の用意ならできてるぜ!」
「はぁ~…船の修理ちょっと休憩。飯か?」
突然、叫び声を上げたナミに食事の準備をしていたサンジと船の修理をしていたウソップが顔を覗かせる。
「コンパスがっ…壊れちゃった!」
困惑しているナミの掌にはぐるぐると回転し方位を示さないコンパスがあった。