第8章 双子岬とアイランドクジラ・ラブーン
「ねぇ、ルフィ。あれを見て。」
「ん?」
クジラの頭を叩き続けるルフィに花子はあるものを指差す。そこにはマンホールの様な物があり開けてみると中は空洞となっていた。
「これ、クジラの体内に繋がってるんじゃない?」
「じゃあ行くぞ!」
「え…。」
中に飛び込もうとするルフィに花子は心底嫌そうに顔を歪ませ彼の肩を力強く掴んだ。
「ルフィ、ここはあなたに任せるわ。」
「何でだよっ!?皆が心配じゃねぇのか!」
「ここはグランドラインよ。何があるか分からないわ。私は皆が戻って来た時の事を考えて辺りを偵察しておくわ。」
真剣な面持ちの花子に大きく頷き頼んだと勢い良くクジラの体内に飛び込んで行くルフィを彼女は笑顔で見送った。
『…主、本当は中に入りたく無かっただけであろう。』
「当たり前じゃない。何処に続いているのか何が起こるか分からない場所にユラを連れて行けないわ。」
ケロッとした顔で言い放つ花子に朱雀はこの時ばかりはルフィを不憫に思った。
『して…何故、主はルフィと共におるのだ?』
「…私ね…また海に出る事にしたの。」
『!…そうか。』
一瞬目を見開くも朱雀は目を細め穏やかな表情で花子を見つめる。
「余り驚かないのね。」
『いや、驚いておるぞ。だが、いつか主は海に出るものだと思っておった。』
海賊として生きていた時の花子はとても輝いていた。勿論、ロジャーがいたからと言う事もあるが故郷にいる時の彼女は必死に何かに耐えている様で朱雀は見ていられなかった。
『…エースが拗ねるな。』
「ふふっ、大丈夫よ。あの子も…今は大切な家族を見つけたんだもの。」
ルフィには悪いが自分の船長は今も昔も彼だけ…自分の人生を…命さえも捧げて良いと思ったのは1人だけ…。
「?…何かしら?」
下の方から声が聞こえ覗き込んでみるとクジラの横腹が扉の様に開き中からメリー号が出て来た。そして、彼等を先導している人物に花子は目を見開いた。
「クロッカス…さん…?」
かつてロジャーと共に"ラフテル"を目指した仲間の姿があった。