第8章 双子岬とアイランドクジラ・ラブーン
先程の爆音はどうやらルフィがクジラに向かって大砲を放った音だった様だ。その衝撃によりスピードが落ち衝突は免れたが船の先が当たりこの船のシンボルである羊の船首が折れてしまった。
「「「あっ。」」」
「あぁーっ!?お前ぇ!俺の特等席に何してくれてんだー!?」
何とも理不尽であるが特等席を壊され怒り狂ったルフィは大きく腕を振り被りクジラの目を殴り付けた。
「「「アホー!!」」」
「かかってこい!この野郎!」
「「お前、もう黙れ!!」」
「こっち見たー!?」
クジラに喧嘩を売るルフィにゾロとウソップが蹴り倒す。ぎょろりと大きな目をメリー号に向けるクジラはまるで船を飲み込もうとするかの如く大きく口を開けた。
「まずいっ!」
それに逸早く気付いた花子はユラを抱え直し親指を噛むとその手を甲板に叩き付けた。
「何だ?!」
「赤い…鳥…?」
「綺麗…。」
白煙と共に現れた巨大な鳥。燃える様な美しい赤い羽に目を奪われている一味をよそに花子はその背に飛び乗ると天高く舞い上がった。
「えっ?!ちょっ、花子さん?!」
「おい!花子!俺も助けろー!」
成す術なくクジラに飲み込まれてしまったメリー号。ウソップの叫びが木霊する。
「ふぅ…危なかった。」
「おかあさん…みんな食べられちゃった…。」
「まぁ、何とかなるわよ。」
心配そうにクジラを見つめるユラに対しさして気にしていない様子の花子は、取り敢えず状況を把握しようとクジラの背に下り立った。
「おい!吐け!皆を返せ!吐け!!」
「ルフィ?」
同じく飲み込まれる事を免れたルフィは仲間を返せとクジラの頭を殴り付け叫ぶ。
「花子!無事だったか!おぉっ!朱雀じゃねぇか!ひっさしぶりだなぁ〜!」
『…お前は相変わらずの様だな。』
花子の口寄せ獣である朱雀とルフィは面識があった。懐かしそうに顔を綻ばせるルフィをよそにクジラは海中に潜ろうとしている。
「?!止めろっ!待ってくれよ!俺の仲間を返せ!これから一緒に冒険するんだ!大切なんだ!」
ルフィの必死の懇願も虚しくクジラは身体を海に沈めていく。何か手は無いかと辺りを見渡す花子の目にあるものが飛び込んで来た。