第5章 ももいろのちかい【桃】
結局この日は、焼肉に行く事は不可能となってしまい、普段から筋トレなどをして体に気を付けてはいるものの、体力が通常よりは少なくなってしまっている俺達は、気の済むまで体を重ね合わせた後、泥のように眠ってしまったのだ。
そして夜がすっかり更けた頃、俺の胸の中ですやすやと寝息を立て寝ているくろばを抱き締めながら目が覚めた。
呼吸をしようとすると、少し喉がくっついている感覚がした。
(やば、何か飲み物…)
くろばの分も何か水分を持ってこようと、起こさないように体を離そうとすると、くろばが俺に縋り付くようにギュッと抱き締め直してきた。
「くろば…?起きた…?」
「…んー…」
これはいつも通りのくろば。
まだ睡眠のまどろみと戦っている最中だ。
「なんか飲み物取ってくる」
「…ん」
肯定の返事かと思ったが、くろばの腕が俺から離れる気配は一向にない。
「くろば…?」
「…まだ離れちゃヤダ」
「…っ!?」
何、このくろば。
めちゃめちゃ可愛いんですケドッ…!!??
「…でも喉が乾いたろ?俺持ってくるからさ」
「…んーん」
…んーんだってよ。
聞きました皆さん?
俺の彼女、マジ天使過ぎるんだが。
「…んな事言ってると、抱き抱えてキッチン連れてくぞ?」
「…ん」
俺がそう言うと、やっとくろばの腕の力が緩まった。
あ、それはさすがに嫌なのね。
「すぐ戻ってくるから、良い子で待ってな?」
「…ん」
そうくろばの頭を撫でると、いつもとは違い、気持ち良さそうに俺の手に身を委ねている。
おいおいおいおいおいおい。
今日のくろばどした…?
クッソ可愛いんだがッ…!!!!!!!!!!!
俺はゆっくりくろばから離れ、そんな最中くろばがまた抱き着いてこようとしたが、そんな誘惑を唾を飲み込む思いで我慢し、急いでキッチンへと向かった。