第5章 ももいろのちかい【桃】
「…さとみの動画ね、実は毎日チェックしてんの」
う、うん…
さっき知ったよ…
「家で仕事してる時も、たまに外に出ないといけない移動の時も、ずっとさとみの動画観てるんだ」
ま、マジかよ鬼すこ…
パソコンの再生履歴は見れたけど、まさか外出時にも俺の動画を観てくれてたなんて…
「私、あんまさとみに甘えたりとか、本心とかあまり言わないじゃない?だから、ちょっと不安だった時もあったの」
「…不安?」
「こんなだらけた私なんて、いつかさとみに捨てられちゃうんなろうなあとか思ったり。だったら深くさとみに介入するのよしとこーとか」
「な!そ、そんな事言うなよっ…!」
むしろ、もっと俺の事だけ考えてくれれば良い。
仕事なんて辞めて、俺に養われて暮らせば良い。
そんな身勝手な考えが頭の中をよぎった。
「気持ち悪くない…?」
(気持ち悪い…?)
「そんな事全然思うワケねーじゃん。むしろもっとくろばの事好きになった…」
そう言いながら大の字になってるくろばの上に覆い被さる。
「…キス、しても良いよ?」
「…え、マジ?」
「あ、ゴメン。今の言い方、上からだった…」
そう謝るくろばが可愛すぎて。
遠慮なくくろばの唇に自分の唇を重ねた。
だが、なけなしの理性を働かせ、触れるだけのキスだけで済ませる。
「え…?」
「ん?どした?」
「…や、やっぱり寝起きの口でキスするの嫌…?」
「ん、んなこたない!」
「…じゃあ、なんですぐに終わらせたの?」
なんだか、いつものくろばと様子が違うような気がした。
「…くろば?」
「もっとしてよ、キス…」
そう言って、くろばが俺に唇にかぶりついた。
「ちょ、くろばっ…」
「…ね、さとみ。もっとして…?」
くろばにこんな風におねだりされたのはいつ以来だろうか。
「…ゴメン、俺今結構理性ギリギリで、いつもより優しく出来ないかも…」
さっきはなんとか耐えられたが、くろばからのキスですっかり理性のゲージが瀕死状態になった。
「ん、良いよ…?早くちょうだい…」
そう言って、またくろばが俺にキスをしてきた。
そんな事されてしまったら、今度は俺も止められなかった。