第5章 ももいろのちかい【桃】
「さと…み…」
「…っ!!!!」
おいおいくろばさん…
そんな声で俺の名前呼ぶなって。
マジでキツい…
本当に襲っちまうって…
再び再生履歴を軽く遡ってみると、くろばは俺の動画を毎日チェックしてくれているようだった。
正直なところ、くろばは俺に同情で付き合ってくれているのかと思っていた。
互いに不利益な事が少ないカップルなんて、そう出来るものではない。
俺ばかりがくろばの事を好きだと思っていた。
だけど、この再生履歴を見たら…
そんな事なかった。
くろばもちゃんと俺の事を好きでいてくれてると実感出来た。
もう我慢の限界かもしれない。
くろばにたくさん愛の言葉を囁いて。
どろどろのぐずぐずに甘やかしてやりたい。
自分の全ての欲望という欲望を、くろばにぶつけたい。
そんな事を思っていると、タイミングが良いのか悪いのか、くろばの目がゆっくりと開かれた。
「…ぁぇ?さとみ…?」
「…ゴメン、起こした?」
「…んーん、普通に寝てた」
「…そか」
正直、今すぐくろばに触りたい。
たくさんキスをして、くろばと一つになりたい。
「…さとみ?」
「…ん?」
「…おいで」
「え」
寝起きのくろばからそんなセリフが出てくるとは思っていなくて、思わずその場で立ちすくんでしまう。
「…どしたのさとみ?」
「…い、いや」
「…なんかあった?」
「…ううん」
いや、あったっちゃあったけど…
「…もしかして、パソコン画面見た?」
「えっ…!?」
「…見たんだ」
そう言うと、くろばがベッドの上で体を広げて大の字になった。
「くろば…?」
天井を見つめながら、何も言わなくなるくろばに不安になり、思わずくろばの名前を呼んだ。
「…気持ち悪かった?」
「へ…?」
な、何が?
くろばの発した言葉の意味が全く理解出来ず、思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。