第5章 ももいろのちかい【桃】
ご飯を食べて、体を動かして、風呂に入って寝る。
まさに黄金のルーティンではないだろうか。
「かーわい…」
くろばを起こさないように、軽くくろばの髪に触れる。
俺と同じシャンプーの匂いが、鼻をくすぐった。
…やっべ。
ちょっと変な気分になってきたかも。
だが、乗り気じゃないくろばを襲うと、しばらく機嫌が直らない事は知っている。
俺は自分の相棒をなんとか説得し、精神統一をする事にした。
そんな時、ふとくろばのPCに目を向けると、珍しくYouTubeの画面を開いているようだった。
勝手にパソコンを弄り、最悪データを消去してしまうミスを犯したとしても、俺もくろばもそこら辺のバックアップ対策は完璧だ。
そんな言い訳を頭の中で思い浮かべながら見たそのPC画面を見て、俺は体が固まった。
「こ、これって…」
まだ目の前の現実を受け入れる事が出来ず、俺はその動画の再生ボタンを押した。
『はいどーも、さとみで〜す!さて、今日の動画なんですけどもっ…』
俺の動画だ…。
そしてその動画の下にあるグッドボタンを見ると、青く色が変わっている。
「押してくれたのか…?」
え、もしかして俺の手が震えて押しちゃったワケじゃないよな?
っていうかくろば、俺の動画見てくれてたんだ。
以前くろばに、俺の動画を視聴しているのか聞いた事があるが"さあね"の一言でその話は終わってしまっていた。
ヤバい。
めちゃくちゃ嬉しい…
体がゾワゾワっとした。
おそらく嬉しさで鳥肌が立ったのかもしれない。
…見ちゃいけない。
こ、個人のプライベートだぞ…
そうは思いながらも、動画の再生履歴をクリックした。
くろばにバレたら怒られる、くろばにバレたら超怒られる!
だが、俺の手は好奇心旺盛でどんどん再生履歴を遡ってしまっていた。
「…嘘だろ」
ま、毎日見てんじゃん…
ヤベェ…
これは嬉し過ぎる…
これが所謂、天にも昇る気持ちというやつなのか…
「ん…」
「!!!???」
び、ビックリした…
もし俺が今の状況を動画に撮っていたとしたら、いつも動画で使っているあのピコンッというSEを置くタイミングだっただろう。
くろばがベッドの上で寝返りをうった。
そして一言。